エウレカ徒然備忘録

時事報道への感想を中心に、ときにアニメDVDを使った英語学習法などを徒然書いています

菅退陣の3条件

 最近の報道を聞いていて引っかかるのが「首相退陣のための3条件」です。確かに、既に退陣をほのめかしたのになかなか辞めない菅首相を追い込む条件としての意味がある反面、3条件を満たすことが既成事実化してしまい、3法案は必ず国会で可決されなければならないこと、逆に可決されなければいつまでも首相が居すわることができるという免罪符になってしまうのではないかなど、おかしな話だと思うのは小生だけではないでしょう。

 そもそも、「首相退陣のための3条件」とは、民主党の安住国会対策委員長が6月24日に首相と会談した際に首相の口から述べられたとされる退陣のための条件であり、1.特例公債法案、2.第2次補正予算案、及び、3.再生エネルギー特別措置法案の3法案が本国会で可決されることを指すとされています。この内、2の第2次補正はすでに国会を通過しており、残るは1と3の法案ということになります。

 NHKを始めとする報道機関は、この3条件をあたかも既成事実であるかのように辞任を表明している菅首相の退陣の条件という言い方を現在採っています。しかし、まず疑問なのは菅首相本人が果たして本当にそう考えているのかということです。この人は相手が党内の盟友である前首相であっても必要とあらば平気で裏切る人です。国対委員長が首相の誓約書を取っているか会談内容を録音でもしていない限り、また別の条件を付して延命策を講じてくることが予想されます。

 次に、主権者からの信を失った政治家に辞任時期の選択権など本来与えられないのではないかという点です。最近の世論調査では、高めでも20%を割り、辛いものは10%にも届かない始末で、普通の神経の持ち主であるならば、とっくに辞任していなければならない水準の支持率をさらに下回っているような体たらくです。実際、震災への対応は遅々として進まない上に、汚染牛肉の問題など想定すべきだったのに対策を怠っていて顕在化した新たな問題が次から次へと現れてきます。加えて、円高放置、いつまでも定まらない原子力政策による海外商談消滅の危機など、西岡参議院議長でなくても「総理はこの国を滅ぼすおつもりか」と聴いてみたくなるようなことばかりしておいでです。

 しかし、このような方に辞任時期の選択権が与えられるという不可思議な現象が起きえているのは、常人の域を超えてしまっているとしか思えない凄まじい権力への執着がまず第一の理由と考えられます。そして、首相の権力への執着に加えて、さらに実質的な理由として挙げられるのは、首相の衆議院解散権行使を恐れる民主党のあり様なのでしょう。おそらく菅首相は、6月始めの不信任案提出時に、解散権の行使についてほのめかし、党幹部との個別の会談でそのことを明言したに違いありません。この時期の解散総選挙民主党は歴史的な大敗北を喫する可能性があります。前回の総選挙で地滑り的大勝利を収めた民主党国会議員の多くは、落選浪人が何よりも怖いはずです。結局、首相を必要以上に追い込んで、解散総選挙に打って出られることを何よりも避けたいのが民主党国会議員の多数派の本音だと思われます。ですから、個人的に異論はあっても、泣きながらでも首相を支えるという不可思議な現象が起きてきているのです。

 こうして見てくると、野党自民党の為すべきことはただ一つ、できれば正々堂々と、必要ならば足を引っ掛けてでも総選挙に持ち込むことです。前復興相を始め、おかしな閣僚にはこと欠かない閣僚人事をしている首相の任命責任を一切の妥協なく追及することが一つ、そして、首相自身の外国人からの献金問題もあります。被災地への配慮は必要ですが、それを足枷に思って躊躇してはいけない、そういう危険水域まで我が国は追い込まれてきていると認識すべきです。それから、自民党政権時代の末期にも見られましたが、首相の座をたらいまわしにして総選挙による国民の信任を受けていないと思われる人物が内閣総理大臣となる仕組みには一定の制限を加えるべきだと思います。つまり、一回の総選挙による衆議院の任期4年の内に総理大臣を交代できる回数を1回に制限し(病気などで交代せざるを得ないことは1度ぐらいあることを想定して)、2回目の時には国会を解散して国民の信を問わなければならないとしたらどうでしょう。内閣総理大臣にふさわしくない人物を党利党略で選出すれば、総選挙の時期が否応なく早まり、政権を失う蓋然性が高まります。その結果、心身ともにその職務に似つかわしい人物が選択されるようになると少しは期待できるのではないでしょうか。