エウレカ徒然備忘録

時事報道への感想を中心に、ときにアニメDVDを使った英語学習法などを徒然書いています

クリミア共和国住民投票後の論点

 3月16日に実施されたクリミア共和国の露西亜編入の是非を問う住民投票は、96.77%という圧倒的な数の有権者編入を支持する結果となりました。露西亜という国の本質はランドパワーではありますが、クリミアは露西亜にとっての衢地であり、黒海艦隊の基地を擁する露西亜海軍の最重要拠点の一つですから、欧米勢力及びNATOには死んでも譲れない要所です。

 今回の一連の騒動ですが、ウクライナで民主的な選挙で選ばれた大統領が昨年11月頃からくすぶり続けていた反政府デモに火がついた煽りで追放され、欧米よりといわれる暫定政府が樹立されます。露西亜ウクライナ領のクリミアの6割を占めるとされる露西亜系住民保護の名目ですぐさま軍事介入を実行します(ロシアがウクライナに軍事介入へ、米大統領は深い懸念表明)。そして、プーチン大統領は、ウクライナで起きたことは「違法なクーデター」とし、政変で大統領を解任されたビクトル・ヤヌコビッチ氏が実際の権限はないものの合法的な指導者だとの見解を示しつつ、逃亡してきたヤヌコビッチ氏をかくまっています(ウクライナでの武力行使、現時点で不要、解決に向け協力の用意=プーチン露大統領)。

 続いて、クリミア共和国の露西亜編入の是非を問う住民投票の流れがつくられます。ウクライナの一部とはいえ、同共和国の人口構成は露西亜系が6割といわれていますから、住民の側から出される異論の声など、無視しても大事には至らなかったということなのでしょう。そして、投票の結果は圧倒的な露西亜編入支持となり、勝利したプーチン大統領は、露西亜への批判を強める欧米諸国をなだめるための冷却期間を設けるかと思ったのですが、直ちにクリミア編入へと動き出したのが昨日のことです(Putin Reclaims Crimea for Russia and Bitterly Denounces the West)。

 米国の長期凋落傾向の中で、やる氣と能力のない現米国政権の足許に付け込むプーチン一流の外交戦を仕掛けられ、苦戦中のObama氏が次にどうでるのか、それが最大の焦点です。結果は見えているようですが、氣になるのは、これで米国は何もできないという定説ができてしまうと、情勢をじっと見ている支那を刺激することにならないかという点です。EUでもNATOの一員でもないウクライナと同盟国の日本とでは、大分事情は異なると信じたいところではありますが、尖閣を巡って米軍が本当に動いてくれるのか、大きな疑問符がつくことになります。しかし、今回欧米が唯一行っている対抗策としての要人の海外資産凍結は、露西亜人にとっては効果が薄くても支那人には効果絶大であると期待が持てますので、一概に論ずることはできないというべきでしょうか。