エウレカ徒然備忘録

時事報道への感想を中心に、ときにアニメDVDを使った英語学習法などを徒然書いています

TPP交渉参加の掛け声は亡国の音

 米韓FTA(2国間自由貿易協定)批准に関する法案が米国議会で可決され、両国はFTA発効にまた一歩前進しました。韓国は本年7月にEUとのFTAも発効させており、国家の一大方針として自由貿易に立脚した貿易立国を推進していくと鮮明に打ち出しています。近年、かつて世界を席巻したあのSONYを始めとする日の丸家電産業が三星一社に太刀打ちできなくなったという信じられないような事態が世界市場では起きており、今回の超円高局面では、頼みの綱の自動車までもが韓国勢に対して苦戦を強いられていると伝えられるものですから、ここにきてTPP推進論者の報道機関や経済学者は鼻息が荒くなるのも無理からぬことなのかもしれません。

 加えて、我が国は鳩山元首相以来日米関係をめちゃくちゃにする方向に動いたのに対し、韓国の李明博大統領は、教育や人材育成を政策の第一に掲げるなかなかの指導者ぶりで、OBAMA大統領との間に信頼関係を築くことにも成功しているとIHTが報じています。もちろんOBAMA氏にしてみれば、対韓輸出をFTAで少しでも伸ばせると期待してのことなのでしょうが...。

S.Korean state visit hikights bond between 2 Leaders

 しかし、です。日本企業が一部の韓国企業に国際競争力で勝てなくなってきている事態の直接の原因は、自由貿易協定の締結が遅れていることでも、指導者が無能なことでもありません。今日の事態は、主に為替変動に帰せられるところが大きいのです。何せ、リーマン・ショック前の07年の平均レート比で、円は対米ドルで約35%上昇しているのに対し、韓国ウォンは約16%も下落しているのです。5年もたたないうちに対韓国ウォンの為替レートで50%も円高に振れていれば、対米輸出の関税が5%程度下がったとしても、こんなものは焼け石に水程度にしかならないことが何故わからないのでしょうか。もちろん、超円高に手を拱いていただけの指導者の無能がことの本質だとの主張には異論を挟む余地は全然ありませんが...。

円及び韓国ウォンの対米ドル及びユーロ為替推移

 ところで、貿易に関する我が国の実態、輸出依存度(=財の輸出額÷名目GDP)は約11.5%(2009年)と、決して高くないのです。というよりも、むしろ低い。主要国の中で、日本よりも輸出依存度が低いのは、米国とブラジルだけです。これに対して韓国は、輸出がGDPの40%以上にもなっており、主要国と比べても輸出依存度が突出して高いのです。貿易立国を明確に掲げた国家方針(国内農業や食料自給率の話には目をつぶるということなのでしょう)が功を奏している間はよいのですが、輸出が止まれば詰みとなる経済構造です。こういう国と同じ土俵に立つためだけの目的で拙速にTPP交渉に参加するなど馬鹿げているのではないでしゅうか。ちなみに、一旦参加を表明してしまえば、後戻りは不可能と覚悟しておくのが、まともな脳みそを持った人間の感覚です。

【中野剛志】 TPP推進者は売国奴〜マスコミはスルー〜