エウレカ徒然備忘録

時事報道への感想を中心に、ときにアニメDVDを使った英語学習法などを徒然書いています

日本人と錠前

 かれこれ20年位前になりますが、ドイツを旅したときに確かRothenbergの犯罪博物館で、貞操帯というものを生まれて初めて目にしました。犯罪博物館なり、貞操帯が物語っている欧州文化の影の部分の一つは、犯罪が多く、鍵が極端に発達したということのようです。対照的に天下太平を実現した我が国の江戸時代は、犯罪が少なく、長屋などつっかえ棒程度がいいところで鍵の発達が全く見られない社会だったのです。

 そんなことをふと思い出したのは、浅草の町はずれを通りがかったところ、事務所ビルらしき建物の前で中年のサラリーマンと思しき人が営業にやってきた乳酸菌飲料若い女性販売員にお金だけを渡して、「これから出かけるから、いつものやつを机に置いといて」というのに対して、女性販売員の方が「お釣りも一緒に置いておけばよいですか」と確認している光景を目撃したときです。

 最近は、丸の内に林立する高層ビルの事務所などの場合、警備がより厳しくなっており、こういった乳酸菌飲料の販売員や弁当屋などもかつてのようにお気楽に事務所内に出入りすることは難しくなっているように思います。そういう小生も、個人情報保護や社内機密の漏えいを避けるという観点から、どんなに有名なブランドであれ、乳酸菌飲料の販売員を事務所内にまで入れている会社があったら、一応は注意を喚起しています。

 しかし、本日の光景を見て、「そういう欧米流の性悪説を振り回すことは、本当に正しいことなのだろうか」とふと考えてしまいました。否、会社を守っていくためには、100回中99回は大丈夫でも1回の間違いが起こりうる可能性があれば、それを消すための対策を考えなければなりません。しかし、一方で、どこにでもいそうなお姉さんの販売員が決して釣銭をごまかしたりせず(しかも、机上に放置された小銭に手を付ける人も一般的にはいないという前提で話が進んでいます)、事務所内に出入りしても社内情報を持ち出したりはしない、というようなことが常識である社会は一朝一夕で実現しない、実に貴重なものであると痛感させられました。

 共同体構想なり、TPPなりで一つの完成を見ると思われるGlobalizationの行き着くところが、我が国がこれまで築き上げてきた公序良俗を根底から破壊しつくしてしまうのではないかとの惧れを抱いてしまうのは、少々飛躍のし過ぎというものでしょうか。

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