エウレカ徒然備忘録

時事報道への感想を中心に、ときにアニメDVDを使った英語学習法などを徒然書いています

橋下大阪市長と日本維新の会について

 昨年の11月、大阪市長大阪府知事のW選挙で大手新聞、週刊誌、TVその他全てを敵に回して大阪秋の陣に勝利した橋下大阪市長は、大阪地区に留まることなく一気に国政の中枢を動かす勢いを持ってました。強大な権力を有する大手報道機関を敵に回して、真っ向勝負で完勝してしまった橋下氏は、この時点で日本一の喧嘩師といって間違いなかったでしょう。かつて、YKKの中で平時であれば最も総理になる芽がないといわれていた小泉純一郎氏が世論の支持を得て首相になり、郵政選挙の大勝負に勝利して長期政権による新自由主義的な政策を断行できたように、乱世には喧嘩ができることが指導者にとってはこの上なく重要な資質になります。

 しかし、橋下大阪市長の場合、あの地滑り的勝利から1年と経たないうちに、国政を狙う「日本維新の会」を立上げてはみたものの、支持率が伸び悩む状態に陥っています。小さな挫折はあったものの連戦連勝でここまできた政治家橋下氏が味わう始めての挫折ではないかと思われます。今のところ失敗と見えるこの現象の原因について考えてみます。

 第1に、橋下氏は急ぎすぎたということだと思います。大阪維新の会大阪府及び大阪市の全権を握ったから、わずか1年足らずしか経っていません。地方から中央に攻め上った「明治維新」の発想ならば、もう少し大阪府とその周辺をがっちりと固めてから攻め上る必要があったのではないかと思われます。橋下氏の政治手法は語弊がありますが、結局独裁です。独裁を認めさせるためには、大阪において、目に見える成果、「特に経済的な成果」を徹底的に作っておく必要がもっとあったはずです。

 第2に、第1の指摘とも関連しますが、橋下氏が国政進出を急ぐあまり、参謀として竹中平蔵氏など構造改革派、新自由主義陣営の学者や元官僚を採用し、重用していることです。維新八策に書かれた政策綱領には、道州制導入、国会議員数の大幅削減、TPP参加など竹中氏、大前氏、古賀氏などがかねて主張している政策が散見されます。しかし、これらの政策は、TPP参加問題が今でも国論を2分していることからも分かるように、果たして本当に国益に適う政策なのか大いに疑問です。

 むしろ、注目すべきは、維新八策の最初に掲げられた「首相公選制」です。国政における権力掌握と一気の改革を狙う橋下氏が本気で実現したいことは、実はこれで、あとの政策は、いわば、竹中氏や大前氏の作文なのではないかと思います。にもかかわらず、竹中氏を公認候補選定の責任者にしていることなど、橋下氏の政策が、所詮は竹中氏やみんなの党が主張している新自由主義的な政策と同一視されてしまう危険が高いと思います(実体もそうなのかもしれませんが...)。そのことは、唯一無比の橋下徹像を大きく毀損することになるのです。

 第3に、そのようなあやふやな政策綱領の下、橋下氏の人気に依存する形で人集めに奔走したものですから、ろくな人材が集まってきていないのではないかという危惧です。おそらく今年前半に集まった塾生たちは、「我が国の今の惨状を何とかしたい」という情熱はあるが、正しい政策は何なのか、あまり考えていない人たちが多かったのではないかと想像します。考えていた人は、普通独裁体制にはついていけないものではないかと思うからです。そして、今回公開討論会で参集した国会議員などは、所詮当選するために自らの信念を平然と置き去りにできる、出身政党からすれば裏切り者ですから(海のものとも山のものとも分からない政党に飛込んでゆく勇気だけは認めますが)、灰汁が強いだけ厄介な連中を引受けてしまったということもできるわけです。

 国民からの圧倒的な支持を得て、数の力で権力を掌握しようと考えた橋下知事の方針は、方向転換を余儀なくされそうです。日本維新の会は、早晩空中分解しそうに思われるのですが、ここは一旦退いて、大阪地区で実力を貯めるときと思われます。