エウレカ徒然備忘録

時事報道への感想を中心に、ときにアニメDVDを使った英語学習法などを徒然書いています

NHKに変化の兆しか2

 近頃まで特定の論客陣で偏った主張を垂れ流すことに邁進していたNHK第一の「ビジネス展望」が「社会の見方・私の視点」と衣替えしてしばらく経ちます。論客陣もある程度入れ替わり、また、大幅な増員が断行された関係で、主張の幅もそれに伴って広がり、若干の改善が認められるようになりました。

 そのよい例が、7月29日(金)に放送された中島岳史氏の「イギリスのEU離脱問題を読み解く」と題する論評でした。中島氏は、東工大の教授ですが、今年の入学式で恥ずかしげもなく英語で入学式の式辞を垂れた男が学長という地位を占める大学で、保守主義者を名乗ってを教授の仕事をされているようです。東工大というところは、少なくとも学問の自由の守護者であることに強い感銘を受けた次第です。

 さて、この日の中島氏の主張は、次のようにまとめることができます。

 まず、英国国民が過般実施された国民投票で「EU離脱」を選択したことを、「反移民」=「排外主義」と決めつけるべきではない、そのような紋切り型は重要な視点を見落としてしまう危険性があります。数字を見てみると、労働党の支持者のような左派の人たちの4割が離脱を支持していることの意味をしっかりと考えてみる必要があります。

 ここで鍵となる言葉は、EU離脱のスローガンとなった「主権を取り戻せ」という前ロンドン市長の主張です。今日、国民主権ということが当たり前のこととして受け止められ、全ての国民は平等な主権者であるということを前提として、国民国家が成立しています。国民国家及び国民主権という概念は、フランス革命時に主権を絶対君主から奪い取るという歴史的な事件に端を発し、例えば東南亜細亜などでは、侵略者であり、主権を独占していた欧米諸国から主権を取り戻すことから生まれでたということができます。

 しかし、近年になって国民主権を外部から侵食するものが現れ、次第にその姿を顕わにしつつあります。それは、グローバリズムと呼ばれる、物、金、人の動きを国境によって止めることなく、自由にしようとする潮流です。グローバリズムが進むと、国家を超えたところで様々な事柄が決まってしまうという現象が顕著になり、一握りの選良たちに富が集中してゆくようになります。すなわち、国民国家及び国民主権という概念は、一組の切り離せない概念であるとすれば、今日勢いを増しているかに見えるグローバリズムとは本質的に相いれないものと見ることができます。英国国民が選択したEU離脱とは、まさにここのところの選択をしたととらえることができるのではないでしょうか。