エウレカ徒然備忘録

時事報道への感想を中心に、ときにアニメDVDを使った英語学習法などを徒然書いています

英語は使えた方が好いが...

 「社内、英語化」でググってみると、名の知れた大企業などがけっこう社内に言語の英語公用語化を進めていることに驚きます。楽天は有名ですが、ユニクロファーストリテイリング外資系企業となったシャープ等の名が挙がっており、その他多くの大企業が英語力の強化を推進しているようです。この流れに呼応するかのように、英語教育を小学校から始める英語教育の早期化の動きも伝え聞きます。明治時代、我が国は欧米からの新知識や新技術を導入するにあたり、高等教育を外国語で行うか、それとも日本語に翻訳して行うかで論争があったといいます。また、敗戦後は、日本語仮名表記論、ローマ字表記論(これは英語公用語化への第一歩だったのかもしれません)など過激な主張が展開された時期もあったと聞きます。

 しかし、我が国は明治時代に日本語による高等教育を選択し、その伝統を今日まで守ってきました。日本人の英語下手は指摘されない日はないくらいですが、しかし、今日の我が国の繁栄やノーベル賞受賞者の数の多さなど、明治の先人達の選択がいかに正しいものであったかを証明して余りあるものです。世界の歴史を見てみると、支配層は庶民の教育水準を低く抑えることでその権力を強固にしてきたといえます。近代の欧米列強による植民地支配の方法も正にこのやり方を踏襲していました。日本人の権力者たちは、寺子屋の伝統が示すように、庶民の教育をむしろ高めることに力を尽くし、明治維新後に採用した教育行政も基本的にはそういうことだったと理解できます。

 にもかかわらず、今日英語公用語化などを唱える動きは、要警戒といえます。もっともらしい理由付けは、少子高齢化が進んで国内市場が縮小していく状況の中で、世界市場に打って出るには英語の話せる人材の養成が必要、経済のグローバル化に対応できる人材が必要ということのようです。何とはなしに納得できるような話ですが、これを進めたところで、所詮は英語を母国語とする国の企業には勝てない無国籍で一流半の日本出身の人材や企業になるばかりではないかと危惧します。また、そうでなくても格差の拡大が心配されている状況下で、流暢な英語を話せる階層とそれ以外の国民とを分断する事態を招くことも十分に懸念され、その弊害たるや目先の金儲けでは償いきれない大きな代償となります。いい加減に国の指導者や大企業の経営者は、日本は経済成長できるということ、立派な国内市場が存在することという前提に立って、議論をするべきときではないかと思料しています。

 散々英語公用語化反対論を述べましたが、けっして英語を勉強するなと主張しているわけではありません。英語を勉強したい人、仕事に生かしたい人はどんどん進んでいけばいいと思います。ただ、国を誤り、一般庶民の生活水中を下げる惧れをはらむようなおかしな施策には断固反対ということです。

英語化は愚民化 日本の国力が地に落ちる (集英社新書)

「英語公用語」は何が問題か (角川oneテーマ21)