エウレカ徒然備忘録

時事報道への感想を中心に、ときにアニメDVDを使った英語学習法などを徒然書いています

米国流民主主義の後退

 田中芳樹氏の代表作「銀河英雄伝説」という作品があります。この中で、未来の人類は銀河帝国自由惑星同盟という二つの陣営に分かれて戦争を戦っているのですが、自由惑星同盟側の主人公でもある楊があるとき民主主義について次のような趣旨のことを述べています。悪しき民主主義というものも優れた指導者を得た良き専制政治というものも存在するが、制度としてはやはり民主主義の方が専制政治に勝っていることは容易に証明できる。専制政治では、上手くいかないときの責任を全て専制君主や独裁者に押し付けることができるが、民主政治では、上手くいかない責任はすべて選挙権を持つ選挙民の責任となる、この一点において民主主義は専制政治に勝っているのだ。

 さて、今朝伝えられた事柄の中に2つも、この民主主義なるものに対する根源的な疑念を投げかえるものがあり、ちょっと吃驚してしまいました。一つは、米国大統領選挙候補者による第3回討論会で、共和党候補者側から発せられたといわれる発言です。この候補、最近選挙において不正が行われることを事前に予測するような発言を行ってきたのですが、選挙結果について認めるかどうかの質問に対して明言避けたというのです。「下手をするとアメリカの民主主義への信頼を否定するものであり、ゲームを戦いながらそのゲームのルールを批判するという自己矛盾でもある」といった反応が主流であるようですが、現実には米国社会の矛盾が手のつけられないところにまで達しており、そういう状況になんら対処できない米国の制度そのものに対する不信感こそがトランプ現象やサンダース現象を生み出した根源であったことを思い出すべきなのでしょう。

 二つ目は、チャイナ訪問中のドゥテルテ比大統領が、「米国とは決別、チャイナが頼り」といった趣旨の発言を行ったことです。ドゥテルテ氏は、相当程度山師的な側面を持った人柄のようで、この手のネタが後を尽きない政治家ではありますが、しかし、こうも明確に米国は頼りにならないと断言し、民主主義とは程遠いただの独裁国家で、その上領土問題を抱える相手に組するような発言を公にするとは、一昔前のフィリピンと米国の関係からは想像だにできないことが起こっているようです。

 今後の国際情勢に関するドゥテルテ氏の見立てがどういうものなのか知る由もありませんが、不気味なのは「銀河英雄伝説」において、長きに渡る戦争で軍事的に勝利を収めるのは、民主主義を標榜する自由惑星同盟ではなく、ラインハルトという英明な君主を得た銀河帝国の方だったことです。