エウレカ徒然備忘録

時事報道への感想を中心に、ときにアニメDVDを使った英語学習法などを徒然書いています

近代日本の宿痾

 今朝の虎ノ門ニュースを視聴しておりましたら、木曜日担当の青山繫晴氏が虎撮りコーナーで横須賀の戦艦三笠記念館に訪ねられたことを紹介しておられました。青山氏は、記念館でご覧になった東郷平八郎連合艦隊司令長官とその参謀たち数人の集合写真について解説されていたのですが、東郷司令長官は、この時代の人らしく写真に魂を吸い取られると思っておられたのか、それとも極度の照れ屋だったのか、写真機から目をそらして中央に写っておいでです。そして、参謀の中でも帝国海軍軍人の正式の服装と姿勢で写っておられる方もいれば、秋山真之さんのように実にくだけた格好で写っている人もいます。青山氏にこの写真について説明した三笠記念館の館長の言では、「この写真こそが帝国海軍なのです。」ということでした。すなわち、最高の意思決定を行う将校は少数精鋭であり、しかも様々な個性を尊重する理念が徹底しているということです。この姿がその後次第に失われ、大東亜戦争の頃には、官僚化した将校の人数ばかりが増えて肥大化していったのです。

 この帝国海軍がその後たどった悪しき官僚化への道という話と底流で繋がっているのではないかと思えたのが、今回の電通事件の解説でした。青山氏は、ここで敢えて自ら命を絶った若い女性社員がなぜ辞めなかったのかという疑問を提示します。一流大学を卒業して電通に入社した優秀な女性が会社を辞めることさえ思い至らない程に追い詰められてゆく会社組織の体制や文化が厳然と存在し、それこそがこの事件の問題の本質であろうと発言されておられました。

 電通事件というのは、今回が2度目であり、過重労働は以前から指摘されていた問題です。しかし、過重労働は問題であり、こんな働き方をしていたら身体がもたないと感じて辞めることができていたならば、2度にわたる電通事件は起こりようがなかったのです。過重労働に加え、辞めることができない心理状態に追い込んでゆく企業の体質は、電通において先鋭化された形で顕在化しているのかもしれませんが、少なからぬ日本企業が潜在的に抱えている宿痾なのかもしれません。