エウレカ徒然備忘録

時事報道への感想を中心に、ときにアニメDVDを使った英語学習法などを徒然書いています

エウレカセブンを見終わって

ふー、やっとここ数日書きたかったお題目に入れました。

この凄いTVアニメ、なんと日曜日の朝7時から放送していたんですね(2005年4月から一年間、50話完結)。GyaOで初めて50話通して見てみました。感動しました。不覚にも感涙にむせびながらだった回も1話や2話では済みません。これだけの傑作を作り上げてしまう日本のアニメ文化の水準の高さには、改めて驚嘆しました。しかも、その最高に上質な作品をこんなしょぼい時間帯に放映するなんて、一体それは、単に余裕をかましていただけなんだろうか??? “Eureka Project”なる売る仕組みを用意し、賞も獲得したようですが、仄聞するに、一部の熱心なFanこそ獲得したものの視聴率は低迷していたらしく、もったいない話です。土曜の夜7時台の時間帯にでも再放送して、日本の文化振興のために、より多くの人に見てもらいたいと本気で思いました。

この作品は、一言にしてしまうと14歳のRenton少年の恋と旅と成長の物語です。これに、月光号と言う飛行艇、Nirvashを始めとしたLFOと呼ばれるRobotと言う味付けが施され、戦争と言う舞台設定がなされています。この設定は、「機動戦士Gundam」を想起させます。しかし、Gundamに相当するNirvashは、一見Gundamほど格好良くはないし、Promotionの絵に出てくるEurekaは、ちょっとツンツンした感じですので、Rentonのように一目惚れすることもなく、気には留まった新番組ではあったのですが、敢えて放送時に見ることはなかった理由は多分そんな所です。

今回は一挙に鑑賞して、作品の完成度というか、自己完結性という点について言えば、Robot漫画の金字塔とも言うべき「機動戦士ガンダム」には少し見劣りすると思いました。Eurekaは、はっきり言って「よくわかんねー」と言うところが多すぎです。例えば、「EurekaとRentonは、結局どうなったんだ? 一緒にはなって地球に留まったようだが、肉体は失って魂だけの存在になってしまったのか?」、「Novac兄弟はいつも金枝篇を読んでいたが、彼らの血族の問題、祭司殺しの慣習などがこの物語にどう関わっているのか?」、「結局、アネモネとは、一体何者だったのか?」、「Eurekaの羽は、何で生えたのだろう。第32話で『人間とCoralian、まるでお伽噺ね』というミーシャの発言があるが、つまり、お伽噺らしく妖精になったのか? 単に人間ではないことをEurekaに思い知らせるためなのか?」 また、第26話Morning GloryでCharlesが「王の息子」とかと呟く場面がありますが、こんなもの初めて見た時は、何のことやらさっぱり分かりまへん、と言うより、呟きだったのでてっきり「俺の息子」と言ったのかと思ってました。

そんな良く分からんところの多い作品であるにもかかわらず、この作品にはそれを補って余りある魅力がありました。その源泉になっているのは、おそらく力と勢いであって、それは、大部分は主人公Rentonの生き方から発しているものだったのでしょう。Gundamアムロは陰の人(何せ、敵を倒す度に1つ、2つと数える癖があります...)なのに対し、Rentonはまっすぐで、眩しいほどに陽の人として描かれます。あのSeven Swellという七色の光を放つNirvashの必殺技も、Rentonの個性に実によく合致するものでした。そして、RentonとEurekaの純愛物語としては、白紙の状態で地上に送り込まれた人型CoralianたるEurekaが自ら語るように、Rentonとの出会いで変わって行く。それは、おそらく、表情の無い美少女人形から、Rentonの色に染められて愛情豊かな人間の女性へと変わって行く過程だったのでしょう。

Rentonが成長する過程で超えなくてはならない父親的な存在が、政府のお尋ね者Gekko StateのLeader Hollandです。このHollandの存在感が、副主人公ともいえるくらいに大きかった。しかも、この超えるべき存在自体が、悩み、恋愛し、嫉妬し、そして、成長するという、当たり前のことではあるが、これまでにあまり類を見ないような設定になっており、実に新鮮でした。そして、Hollandの彼女のTalhoが、また、ガキのようなHollandを包み込むようでもあり、包み込みきれない青いところもある一筋縄では行かない女性で、HollandとTalhoは似たもの同士の危うげだが強い絆に結ばれた面白い設定になっていました。月光号の中で、やはり大人のCoupleはHildaとMatthiouで、特にMatthiouは、Eurekaに子供がいると知った時、戦闘中自らの手で人を殺していると思い知った時、落ち込んでいるRentonをその度に絶妙の間合いで励ますのでした。「お前、気にしてるみたいだから言うけど、普通見れば分かるだろ。あれらがEurekaの実の子だと思うか」(Eurekaはかつて軍の特殊部隊に所属し、命令のままに虐殺した住民の子を三人引き取って育てていた。) このあたりは、教えず、殴る、蹴るのHollandの持たない男親の暖かい気遣いをMatthiouやHapが分担する形になっています。Eurekaに登場する人物たちは、月光号の乗組員に限らず、皆個性豊かに描かれていて見事です。とりわけ月光号の大人たちは、それぞれが個性豊かで、EurekaとRentonとのやり取り様子が生き生きと描かれており、EurekaとRentonの成長していく過程に様々な形で関わっていきます。

久々に感動的な良い作品に出会えて、本当に幸せな気分に満たされました。本作品には心から感謝したいと思います。