エウレカ徒然備忘録

時事報道への感想を中心に、ときにアニメDVDを使った英語学習法などを徒然書いています

日興Cordial不正会計処理

日興証券Groupの不正会計処理事件は、早くから内部告発怪文書が証券界などを中心に流れていたようだ。夕刊紙などでも2006年2月頃に既にこのことを伝えていた。事件が公に発覚したのが昨年末、その後同社株は整理ポスト入りし、一時上場廃止の可能性も取りざたされたが、まさかあの日興がと言う雰囲気の中で、値を戻して年を越えた。ところが、ここに来て、社内調査の結果、経営陣の関与した組織ぐるみの偽装だったことが明らかになり、上場廃止の可能性が現実味を帯びてきた。

丁度一年ほど前の出来事なので、まだ記憶が鮮明なため、どうしても引き合いに出されるのがLivedoor事件だ。Livedoor会社四季報2005年秋号によれば、総資産2438億円、株主資本1239億円、売上高308億円、従業員1582名とある。この規模の会社で、2004年9月期の連結決算では経常赤字であったにもかかわらず、架空売上の計上、投資事業組合を通じたライブドア株式売却による投資利益を売上に計上し、50億3400万円の経常黒字であるとする有価証券報告書虚偽記載をしたというのが、堀江貴史被告の罪状である。対して日興、2006年3月期、総資産85,988億円、株主資本8335億円、営業収益4885億円、従業員11278名である。この会社が、2005年3月期および2006年3月期において、少なくとも300億円の不正会計処理を行っていた。

会社の規模は、一桁違うが、不正処理の額も一桁違う。手口は、特別目的会社(SPC)を使った会計操作で、似たようなものだ。なぜ、日興の経営陣は、逮捕されないのだろう。日興株は、上場廃止にならないと、どうして言えるのだろう。

そもそも、日興証券は、命を懸けて市場を守っていかなければならない立場にある証券会社である。その日興の裏切り行為は、Livedoor事件と比べても極めて悪質で、Livedoorに対して科された制裁以上のものが科されることはあっても、それより軽くなることは、論理的にはありえない。しかしだ、今の段階では、あらゆる人に去年のLivedoor事件における経験が強く残っている。ここであの事件処理の再現をやったらどうなるか、従業員数は、8倍弱である。株主資本も、およそ8倍弱。つまり、規模的には、Livedoorのおよそ8倍弱の影響が懸念されるとしても不思議でも何でもない。そして注目すべきは、外人投資家との関係であって、日興の4.8%をCitibank Groupが保有し、全体で50%弱を外国人投資家が握っている。Livedoorは、思ったより高いが、外国人保有比率17.5%だった。特に、投資銀行の雄Lehman Brothersが、堀江社長に次ぐ6.4%の大株主になっており、事件発覚の頃は、同社が如何にIT企業と言うよりも金融会社に成り下がっていたかを連想させる。

さて、ここからどう読むかだ。

1.論理的にはしっくりいかないが、社会的経済的影響があまりに大きいことを配慮して、上場廃止には至らない。証券の場合、旧大蔵省による山一證券廃業の処理で混乱を極めたことはまだ記憶に新しいし、問題をこじらせて、会計制度不信が再燃すれば、株式市場は今年一年をまた棒に振る危険性が高まり、日本経済全体の問題に発展しかねない。すっきりはしないが、こっそり、前社長逮捕辺りで打ち止め?

2.Citiは、既に消費者金融関連事業からの事実上の撤退で手ひどくやられていると言う見方がある。手負いのCitiに追い討ちをかけるような訳にはいかない、と言った具合の外資に対する配慮が働く。

3.Livedoorを叩いた時のような、拝金主義を諌めるといった、ある種の社会的な大義名分や意味付けは、今回の事件の場合、ほとんど考えられない。

と言うような、仮説を立ててみたが、そこから導かれるのは、上場継続と言う結論である。とは言っても、Livedoor事件との対比で、矛盾を衝かれることも十分予想され、本当は予断を避けたほうが良いのかもしれない。ただ、言える事は、日興証券自体、上場廃止と言う最悪の事態を迎えても、山一のような廃業と言うことではないこと。だから、証券業界再編の台風の目として、これからも存続していくことになるであろうことは、多分間違いないことだろう。また、日興上場廃止の際に、漁夫の利を得るのは、野村、大和を始めとした、大手総合証券であると予想される。その上、日興株を組入れていた年金や投信などの機関投資家は、証券株の比率を維持するとすれば、代わりを見つけなければならないから、他の証券会社株は、どうころんでも当面しっかりと言う仮説を立てている。