エウレカ徒然備忘録

時事報道への感想を中心に、ときにアニメDVDを使った英語学習法などを徒然書いています

屍姫 赫

年末の休暇はAnime三昧ということで、Gyaoで放送中の「屍姫 赫」(Gainax)を見てみました。特殊な超人的能力を身に付けた主人公が、自らの肉体を駆使して敵と戦う型のSF戦闘Animeは、古くは手塚の「鉄腕アトム」、「ビッグX」など枚挙に暇がない。「屍姫」は、主人公が美少女、敵がかなりおどろおどろしい「屍」=ゾンビということで、最近のAnimeでは、「Blood+」や「灼眼のシャナ」などの系譜に属する、戦闘系萌えAnimeということになるのだろう(屍姫の画質は萌え系とはかなり離れていると思うが、主人公のセーラー服着用などから)。この系譜だと、世界観や物語の展開が稚拙だと、単なる萌えAnimeになってしまい、正統派Anime Fanの鑑賞に堪えられなくなってしまう。そういう意味では、出来は悪くなく、2009年1月から開始予定の「屍姫 玄」も期待できる。

1.世界観

強い未練または妄執のために死してなおうごめく死体を物語では「屍」と呼ぶ。屍は生きる人間を襲い、殺して行く。そんな屍を狩るために光言宗の秘儀により作られた特殊な屍の少女が「屍姫」である。主人公星村眞姫那は、光言宗開祖の高弟10人の家系である「偉家十聖」の一つ星村家に生を受け、幸せに暮らしていたある日、屍の大群による襲撃を受け、一家皆殺しにされる。屍として蘇った彼女に屍姫となる適性を見出した光言宗は、早くに親を亡くし、星村家に引き取られて成人した光言宗の少僧正、田神景世に眞姫那の契約僧に成ることを要請する。正義派の若手僧侶として、人間に危害を加える屍と戦うためとはいえ、年端のいかぬ少女たちの屍を使う光言宗のやり方に疑問を持っていた景世ではあったが、本家筋にあたり幼いころから知っている眞姫那のたっての願いを聞き入れ、共に屍との戦いを続けることを誓うのだった。

2.人間関係

真言宗系の密教と言う設定になっている光言宗では、屍姫を作り出し、日々屍との戦闘をこなしている。屍姫には縁で結ばれた契約僧が一人ずつおり、対になっている。眞姫那と景世もその一対で物語の進行上、当然最も重要な対である。眞姫那の性格は、自らの屍姫になった目的を完遂するためなのか現実主義者で冷徹、かなりのツンデレ、屍を倒すときも女だから出来る容赦のなさと言う感じだ。田神景世は、情に厚く、人間の器も大きい理想的な人物で、屍姫に対しても死者や穢れたものまたは道具としてではなく、人間として接している。当然のことながら、彼の屍姫である眞姫那も景世に対しては特別な感情を抱いているようで、もう一人の主人公であり、景世の血の繋がらない弟である花神旺里も眞姫那に惹かれながら、彼女のことを兄景世の彼女と思っていたふしがある。なお、旺里が彼女に惹かれたのは、単純に同年代の美少女に惹かれただけというよりは、彼の「死を身近に感じ、忘れない」という特性から屍姫と言う特殊な存在である彼女に興味を持ち、惹かれていったということなのだろう。

花神旺里と星村眞姫那のBoy Meets Girl Storyとして見るならば、景世の補佐的な仕事をこなしていた伊佐木修二の屍姫瑠翁水薙生(みない)は、旺里と短い間だったが心を通わせた年上の女性と言ったところなのだろうか。景世と違い、屍姫を出世の道具としか見ない伊佐木に水薙生はいつもひどい扱いを受けていたが、生前心中に失敗し、結果的に相手を殺してしまったと言う罪の意識を強く持った屍姫は、伊佐木の扱いにも従順に従っていた。そんなある日、ある屍との戦闘に巻き込まれた旺里を救い、彼から「ありがとう」と感謝の言葉を言われた彼女は、屍姫になって初めて生前の罪に対する償いとは異なる戦うことの意味と屍姫としての自らの存在の意味を見出す。協力して屍を倒した二人は、この後急速に親しさを増していくが、水薙生が伊佐木の許から離れていた隙に伊佐木がチンピラに刺されて死亡するという事件が勃発する。契約僧を失った屍姫は、新たな契約僧と契約しない限り、消滅するか、さもなくばただの屍になってしまい他の屍姫姫により始末されてしまうのだ。

旺里は水薙生をバイト先の喫茶店パルテノンにかくまおうとするが、この店の店長の素顔は、景世とは同門かつ修行時代同室の仲間であった僧壬生貞比呂。そして、喫茶店のウエイトレスは彼の屍姫遠岡アキラだった。光言宗僧侶の中でも裏道に詳しい(自身一匹狼で行動する地下遊撃隊のような存在)貞比呂から、可能性は低いが旺里と契約を結べば、屍姫として生きていけるかもしれないと説得された水薙生だったが、伊佐木との縁切りを拒み、結局アキラに殺されることを選択する。伊佐木なんかに義理立てして...というのがアキラの弁だったが、むしろ、心を通わせた旺里を不幸にするかもしれない彼女との契約について彼女自身がためらったということなのだろう。この事件は、旺里の心を大いに傷つけ、一時眞姫那をはじめ他の屍姫との距離をとるようになるが、死んだ者のことを覚えていて身近に感じてやりたいという気持ちから水薙生のことについて話を聞きに訪れた彼を眞姫那が受け入れたことで、ギクシャクした関係は一応修復される。

この他、景世や旺里が背信僧赤紗と関係しているのではないかという嫌疑の調査にやってきたいけ面と美女の対、送儀嵩柾(弦拍)とその屍姫山神異月。異月は年齢(この物語では享年)も眞姫那とほぼ同じ、武器は眞姫那がサブマシンガンンの連射を多用するのに対し、二丁拳銃と共通点が多いが、戦い方はいつも真っ向勝負の眞姫那に対して、後方支援のような感じである。なお、弦拍は史上最年少で契約僧に成ったとのことだが、第12話で景世が赤紗や七星との戦いの中、戻らぬ人となり、息を引き取る前に家族を守り、眞姫那を救うためにと契約を旺里に譲渡したので、ここに史上最年少記録が破られたのかもしれない。この時旺里16歳の誕生日を迎えたばかり、光言宗の得度さえしていない。

七星と赤紗を景世の命という重すぎる代償を払って斥けた眞姫那と新たなる契約僧旺里の許に最初に駆けつけたのは、景世を単なる同門の先輩という以上に慕っていた、荒神莉花と彼女の屍姫天瀬早季。この2人は、年恰好こそ違うが、小学校の同級生で親友だった。不慮の事故で亡くなった早季は、光言宗名門の一つ荒神家に生まれ、女性ながら契約僧に成る運命を背負った莉花の屍姫になり、2人は変わりない固い女の友情で結ばれているという異色の対である。

3.玄

そして、物語は光言宗契約僧としての旺里とその屍姫眞姫那の七星との戦いという佳境に入ってゆく。ところで、屍姫の立場から見た契約は、108体の屍を倒したら天国へ行ける、途中で契約解除は出来ない、道半ばで倒れても文句は言わない、の3つなのだが、眞姫那が仇敵を全て倒せたとして、その後の彼女は一体どうなってしまうのだろう。この手の女性主人公の話は、超能力を持った女性の出自やら経歴があまりにも特殊すぎて、人間としてはなかなか幸せには終われないところがあるようだが、既に死んでいる眞姫那の場合、最後は景世の許天国へ旅立って行くことになるのであろうか。