エウレカ徒然備忘録

時事報道への感想を中心に、ときにアニメDVDを使った英語学習法などを徒然書いています

お前のドリルは天を突くドリル_天元突破グレンラガン

以前知人から薦められて氣になっていたRobot Anime「天元突破グレンラガン」の劇場版「紅蓮篇」及び「螺巌篇」を一氣に見ました。TV版を見ていないのであまり偉そうなことは書けないのですが、劇場版は概ねTV版から大きく外れない物語の展開になっているようです。だだし、単なるDigestではなく、時間の制約等を配慮してより効果の出るような部分修正は施されていて、TV版とは細部が微妙に異なる作品です。しかし、この劇場版を見れば「天元突破グレンラガン」というAnimeについてある程度は理解できるという感じですか。

物語は、地上ではなく地下で生活するようになってから久しい人類のとあるジーハ村に住む二人の若者「穴掘りシモン」と「紅蓮団リーダーのカミナ」が、シモンが掘り当てた小型のRobotである事件をきっかけに地上に出るところから始まります。この時代から1千年以上昔に人類を始め螺旋族と呼ばれる宇宙の知的種族はあくなき進化と発展を遂げていました。しかし、その中のAnti-Spiral(反螺旋族)と呼ばれるその当時最高の進化を遂げた螺旋族がいて、彼らは螺旋族の進化力が極端に発動した結果やがて宇宙をも破滅させると考え、進化を封印してしまいます。そればかりでなく、抵抗する人類等の知的生命体を戦闘の末に破り、彼らの進化をも封印する措置を施したのでした。それが、わずかに残った人類が地下で細々と暮らすようになった理由です。そのころ地上は螺旋王が統治し、螺旋王がクローン技術で作り出した螺旋力を持たない獣人によって支配されていたのです。獣人たちは、螺旋王の命令によって、ガンメンというRobotを駆使し、地上に出た人類を抹殺していたのです。

そんな世界に上がった、カミナは獣人から一機のガンメン奪い取り、グレンと名付け、シモンのラガンとともに螺旋王との闘いの日々に明け暮れます。職人肌でどちらかといえばウジウジ型主人公であったシモンも、気合で突き進むカミナに「お前のドリルは天を突くドリルだ」と励まされ、成長していく物語が「紅蓮篇」です。物語の出だしで、敵ガンメンとの戦いに躊躇するシモンに対して「お前を信じるな! お前を信じる俺を信じろ!!」と言い切るカミナの言葉は非常に印象的で、結局は「自分自身を信じろ!」と言っているのですが、このころのシモンには、より心に響く言い回しです。というのは、人間誰しも自分自身のためにはがんばれませんが、信じてくれる他人のためには意外と頑張れるという真理を端的ついているからです。

この言葉が、カミナが戦闘中の負傷で亡くなるまでに「俺が信じるお前でもない。お前が信じる俺でもない。お前が信じるお前を信じろ!!!」と変わっていきます。カミナは、欠点もありましたが、実に魅力的な指導者で、発展途上のシモンの良き先師であったのです。そんな彼を慕って人が集まり、大紅蓮団が形成されたのでしたが、カミナの死によってシモンも大紅蓮団もいったん方向性を失い、危機に瀕することになります。

そんな状況で、シモンはカミナのようになろうと焦りますが、無理がたたって精神的に不安定になり、それを察したラガンはシモンの意思に反して暴走し、谷に落ちてしまいます。そこでシモンは螺旋王の娘でありながら、父親に捨てられ、死を待つばかりのニア姫を助けます。シモンはニア姫に「カミナになろうとするのは間違っている、シモンはシモンであればいい」と励まされて立ち直り、螺旋王の四天王を滅ぼし、次なる螺旋王との戦いに向かうところで紅蓮篇が終了します。

続く螺巌篇では、王都テッペリンにおける螺旋王ロージェノムとの戦いが出だしで軽く紹介されています。シモンが一騎討ちの末螺旋王を倒し、人類は地上における繁栄を再び取り戻しつつあった7年後に時間が飛びます。シモンは、政府の要職にあって多忙を極めるなか、求婚の承諾をニアから得て充実した日々を送っていました。しかし、Anti-Spiralがかつて定めた進化を封印する措置がここに発動し、未知なる敵が現れると同時に月の落下現象が起こってしまいます。

シモンら大紅蓮団は、この危機を目の当たりにして再び結集し、月の落下を回避しますが、ニアはAnti-Spiralに連れ去られてしまい、シモンと大紅蓮団はニアを取り戻し、再び人類を滅ぼすであろうAnti-Spiralと戦うために彼らの母星がある別宇宙に乗り込むことになります。全能ともいえる強大な力を持つAnti-Spiralとの戦いの苦難を乗り越え最終的に勝利を収めるシモンですが、地球に帰還後大切な女性ニアを失い、人類の未来を後進に託して首都カミナシティーを去るのでした。

本作品、TV版がTV東京系列で放映されたのは2007年4月から9月までの時期で、あのEvangelionGAINAXによって制作されています。面白いのは、Evangelionが、進化論を否定する宇宙人降下説に立脚した物語構成になっているのに対して、GurrenLagannの方は、徹底的に進化を肯定するお話になっていることです。何せ、シモンに至っては、最終決戦で神に匹敵する相手をその螺旋力(=進化力)で打ち負かしてしまうのです。シモンの「ドリルは一回転するたびに前進するんだ」という台詞など、近代市民社会を生み出した頃の西欧社会を髣髴させるような感じがします。

同じような主題で、もう少し戦争に特化した取り上げ方をしたと思われるのが、“Gundam Seed Destiny”ですが、本作品の方が主題の描き方及び娯楽性で数十倍も出来は良いと評価しています。また、何といっても、この作品には視聴者を感動させる力があります。GAINAXの独特の娯楽性の過剰サーヴィス、Robot Actionが非現実的なこと、ガンメンがいま一つ格好悪く思えてしまう点など、個人的な好みの問題はありますが、それを補って余りあるジーンとする感動力を備えた秀作になっています。人生を豊かにしてくれる傑作Robot Animeの一つです。