エウレカ徒然備忘録

時事報道への感想を中心に、ときにアニメDVDを使った英語学習法などを徒然書いています

アニメ Sola

「民主共和政とは、人民が自由意志によって自分たち自身の制度と精神を貶める政体のことか」というのは、銀河英雄伝説の主人公ラインハルトの問いかけでしたが、一刻も早く退場させなければならない政権というものが存在します。退場させた後に何らかの希望が持てるならば、即刻まず退場させるために声をあげるのが良いに決まっているのです。しかし、その希望が持てないとき、それでもとにかく今行うべきことは、居てはいけない者たちを退場させることなのか、それとも、何もさせずに柿が熟して自ずから落ちるのを待つ方が良策なのか、迷うところです。

ちょっとManiacな作品だったのですが、Solaという全13話のAnimeを見てみました。夜禍人(やかびと)という超能力を持つ不老不死の少女がHeroineの不思議な話なのですが、2007年4月から6月にテレビ愛知千葉テレビ及びTVKなどで深夜にひそやかに放映されたため、知名度はいま一つの作品です。

全体的に不思議な雰囲気を漂わせる作品で、感動の大作と呼べるような代物ではあり得ないのですが、独特の世界観や雰囲気にちょっとはまる感じはあります。「イヴの時間」などと共通するところがあるのかもしれませんが、Solaの方が物語としての意外な展開があり、ちょっと悲しい結末です。ただ、煎じ詰めると“Boy meets girl.”の王道路線と言えないこともありません。

主人公森宮依人(よりと)は、空の写真を撮るのが趣味で、15歳の高校生。仲の良い姉の蒼乃と2人で暮らしていました。ある夜、古い自販機の前で、「トマトしるこ」なる珍妙な飲料を好む何とも不思議な少女四方茉莉(まつり)と出逢います。彼女の正体は、人間ではなく、不老不死ではあるが、太陽の光を浴びると身体が焼けてしまうため夜の住人である夜禍人だったのです。依人は、400年も生きているのに本当の空を見たことがないという茉莉にいつか本当の空を見せてやると約束します。これは日本人の男に顕著に見られる特徴なのかは判断いたしかねるところですが、茉莉のような悲惨な運命を背負いながら健気に生きている美女に欲情してしまうのは、なぜか説得力がありました。この類型に当てはまると思われるHeroineは挙げればきりがないのですが、EurekasevenのEureka、Zegaの三崎紫雫乃、VotomsのフィアナなどRobot Animeだけでも3人ほどすぐに出てきます。グレンラガンのニア姫も人間ではなかったですね。

物語が進むにつれ、依人は家に居候させていた茉莉を過労のため入院中で家を空けていた姉の蒼乃に紹介せざるを得なくなり、茉莉を伴って蒼乃の病室を訪れます。しかし、茉莉と蒼乃は遠い昔からの因縁で結ばれていた女同士で、後に蒼乃も夜禍人であることが判明します。弟の依人と2人で静かに暮らすことだけが望みだった蒼乃と茉莉の間に確執が生じ、2人は長年の因縁に決着をつけるべく、夜禍同志の超能力を駆使した戦闘が、依人を巻き込む形で始まってしまいます。そして、依人自身の真実も依人が望んだ結果により明かされていくのです。

ここに見られるのも、Two Heroineの時の典型で、一方が母親の象徴であり、もう一方が恋人や愛人たる女性の象徴になっています。母親ではありませんが(実は母親といってもよい存在だった?)姉である蒼乃が前者であり、異性として惹かれあっていた茉莉が後者であり、本作は2人Heroineものの典型にぴたりと当てはまります。2人Heroineものの典型的作品としては、Robot Animeの中では、かの「新世紀Evangelion」における綾波レイ(母親のクローン)と惣流アスカ(恋人)の対照が挙げられます。

本作品の結末は、少し悲しいのですが、2人は一緒に消滅することを選択し、残された1人は2人によって生かされたことを自覚して、やり直しの人生を歩みだすというところで幕を下ろします。物語の展開も程よい流れで、比較的納得のいく良作です。短い作品なのにもかかわらず、藤原啓治さんなど声優陣も実力のある人で固めていた感じで、茉莉の声は能登麻美子さんだったのですが、やはり上手いです、能登さん。茉莉は、悲惨で孤独な運命を受け入れた上で、表面的には明るく振る舞っているという感じの女性なのですが、そういう役は能登さんのはまり役だと思います。

悲しい結末なのに物語全体の不思議さのためか、舞台劇の悲劇が終わった後のような印象で、いま消滅したはずの2人を演じた役者も一緒に出演者達が手をつないでCurtain callに応えて出てきそうな感じさえもちました。NOMADさん、良い作品をありがとうございます。