エウレカ徒然備忘録

時事報道への感想を中心に、ときにアニメDVDを使った英語学習法などを徒然書いています

2011年1月胡錦濤の訪米

胡錦濤主席が19日から米国の首都ワシントンを訪問しています。訪問に先立ち、米紙の書面による質問に答える形で米ドル基軸通貨制を「過去の遺物」と切って捨てたと報じられています。これは、人民元の迅速かつ大幅な切り上げを迫る米国に対する牽制と受け取られているようですが、単なる牽制にしてはやばすぎる発言と思われます。

そもそも、現在の覇権国である米国の力の源泉は、圧倒的な軍事力と基軸通貨米ドルです。基軸通貨を有する国にとって、国内取引と外国貿易は本質的には異ならない取引です。また、第三国間の貿易、例えば日本が中東から原油を輸入する取引の決済にも米ドルが使われますから、天井知らずの双子の赤字問題をかかえていようとも米ドルの需要は枯渇することのない井戸のようなものです。

その米国が軍事力同様に失いたくないはずの力の源泉を真っ向から否定する発言は、よほどの能天気か、もはや米国など懼れはしないという自信の表れなのか、したたかな支那の指導者らしからぬ発言のようにも思えます。とにかく、二国間関係は、この発言で表面上はともかく、実質的に決定的な対立を免れないものとなり、関係改善など論外と思われるのです。つまり、今回の訪米の真の目的は二国間関係の改善に非ずということなのでしょうか。とはいえ、米ドル基軸通貨制を崩すことが米国の覇権を崩すことに繋がると気付いていた諸国は、以前から基軸通貨切り崩し活動を継続して行ってきているのは明白です。今回の胡錦濤発言は、その活動をあまりに赤裸々に語ったに過ぎないのかもしれません。

=== 毎日新聞電子版より引用 ===

胡・中国主席:ドル基軸「過去の遺物」発言 あす首脳会談 中国、米に揺さぶり

 【北京・浦松丈二、ワシントン斉藤信宏】中国の胡錦濤国家主席が16日付の米紙の書面インタビューで、米ドルを国際基軸通貨とする体制を「過去の遺物」と見直しを訴えた。08年の米国発金融危機でドルの地位が揺らぎつつあるが、市場では「ドル基軸体制そのものはしばらく変わらない」との見方が大勢で、中国は、19日にワシントンで開く米中首脳会談を前に米国に揺さぶりをかけ、米側の人民元切り上げ要求をかわす狙いとみられる。米ウォールストリート・ジャーナル紙(電子版)によると、胡主席は、08年のリーマン・ショックを引き金とした世界的な金融危機がドル基軸の国際通貨体制の「欠陥に根ざし」ていると指摘。さらに「米金融政策は世界の流動性に大きな影響を与える。ドルの流動性は合理的で安定した水準に保たれるべきだ」と注文を付けた。米連邦準備制度理事会FRB)が景気刺激策として大規模な米国債買い取りを進めているが、市場にあふれかえったドルが高成長の中国など新興国に大量に流入。資産バブルやインフレを過熱させる懸念が強まっており、こうした状況が胡主席の発言の背景にある。

中国は08年の金融危機後、新たな国際通貨体制の必要性を主張。昨年4月には、中国にインド、ブラジル、ロシアを加えた新興4カ国でドル基軸体制の見直しを議論するなど、新興国の経済力拡大に合わせて国際的な発言力を高めようという狙いもあった。ただ、胡主席も「(人民元が)国際通貨になるには相当な時間がかかる」と認める通り、ドルに代わる基軸通貨は見当たらず、人民元も国際通貨としては足元にも及ばない。市場では「中国が本気でドルを基軸通貨として『過去の遺物』と考えているとは思えない。米側の人民元大幅切り上げ要求をけん制する意味合いが濃い」(第一生命経済研究所の西浜徹副主任エコノミスト)との見方が大勢だ。

=== 引用終わり ===