エウレカ徒然備忘録

時事報道への感想を中心に、ときにアニメDVDを使った英語学習法などを徒然書いています

人間と仕事−その2−

今年、戌年も、今日を入れてあと三日。「光陰矢のごとし」である。

野球の新庄選手が、日ハムの優勝、日本一を花道に今季限り現役を引退するらしいが、この人は、どうしようも無い能天気だとずっと思っていた。この人ほどの才能があれば、もっと野球選手としての本筋に精進すべきではないかと。しかし、最近は、新庄ほどの恵まれた才能があるならば、こういうのもありかな、と思えるようになってきた。本人が幸せなのが一番なのかもしれないと。

おそらく、日本人の伝統的な価値観からすると、阪神時代の新庄の指導もした野村監督などの現役時代の話などが、一番耳当たりが良いのだろう。「あの当時は、一軍に上がって、正選手の座を勝ち取ろうと努力した。手取り足取り教えてくれる先輩、コーチなどいなかったから、他人から技術を盗んだ。」というハングリー精神の見本のような話。同じ捕手では、巨人で打撃力を備えた正捕手だった藤尾から、かなり高度な競争で正捕手の座を奪った森の話など、かなり聞けば聞くほど世知辛い世界である。

今時の選手でも阪神の赤星のような若者は、野村監督の時代となんら変わらない価値観と行動様式とを持った選手のように見受けられる。交流戦で彼を見出し、育ててくれた野村監督のところにちゃんと挨拶に行く。「打撲など、選手にとって怪我の内に入らない。」と言う金本選手の言葉に、自らも骨折を押して試合に出たこともあった。昨日報道された金本の来期年棒は、推定5億5000万円で現役最高額だそうだが、阪神の不動の4番であるばかりでなく、周りの若い選手たちにこれだけの良い影響力を及ぼすならば、高くは無いのだろう。

しかし、考えてみると、こういう生き方、野村監督や金本選手、赤星選手のような模範的な選手としての生き方は、結構しんどいというか、常に交感神経が全開になっているような感じで、あまり続けていると病気になるんじゃないかと心配になってきた。人それぞれなんだろうが、新庄がこれをやったら、とっくの昔に怪我か病気で現役を退いていたかもしれない。

小泉さんの5年間、日本は明らかに市場原理主義的な方向、より厳しい競争社会への方向に舵をきった。交感神経全開状態が要求されるのは、多かれ少なかれ、運動選手などの限られた世界の話ではなくなった。野村監督や金本選手のように、現役を長く続けられる事自体、上手な息抜きの仕方もできていることの証明なのだが。それにしても、新庄のように、ほとんど副交感神経全開状態で、現役選手生活を終える人がいてもいいし、今のような時代、かえって、彼のような生き方が羨望の目で見られるのかもしれない。

結局、当たり前のことだが、人間や人生をありきたりの成功で量ることはことはできないし、ましてや記録や稼ぎの多寡だけで量ろうとすること自体間違っているのだろう。新庄さん、あんたの存在自体がそういうことを教えてくれる稀有な人だ。

と言いつつ、こんな本を読み始めた。大前研一さんなどが提唱している問題の本質にたどり着き、解決する力と言うことについて、自分なりに問題意識を持って学ぼうと言うことだ。類書を数冊、読み込んで、使いこなせるまでにしたい。