エウレカ徒然備忘録

時事報道への感想を中心に、ときにアニメDVDを使った英語学習法などを徒然書いています

機動戦士ガンダム第08MS小隊−その1−

ここのところ忙しくて、なかなかBlogを更新する閑がない。Eurekaの英語編もご無沙汰しています。そんな中、一週間に一度、ビール片手にほっと一息しながら見ているのが、このMS Gundam08小隊です。この作品は、1996年から1999年頃にかけてOVA(2月6日「OVAとは何ぞや」参照)として製作されたもので、数あるGundam作品の中でも、戦場における理想主義が成り立ちうるのか、Romio and Julietoのような恋愛が戦場において何らかの意味を持ちえるのかと言った主題を取り扱った佳作であり、秀作です。

この作品の主人公アマダ・シローは、宇宙植民地の一つSide2の出身で、名前と容貌から推察するに、日本人若しくは日系人である。舞台は、Original Gundamと同時代の地球、東南亜細亜戦線であり、Zeonの攻撃によってSide2が殲滅されて以来、故郷を失ったシローは、Zeonを激しく憎んでいた。

しかし、シローは、生来の理想主義者であり、創造力に富んだ芸術家肌の一風変わった小隊長であった。08小隊に着任早々、理想主義者丸出しの「隊員の一人たりとも死なせない」と言う着任挨拶に、宇宙で着任途上のシローに危ないところを援護されたサンダースJR.軍曹以外はお手並み拝見を決め込む隊員たち。シローをその苗字にも引っ掛けて「アマちゃん」と呼び始める。

このシローの人物像は、必然的に科学万能主義を否定する立場につながり、彼の運命の女性アイナ・サハリンの兄であり、Zeon軍技術将校のギニアス・サハリンの科学万能主義とは図らずも対極を為すものになっている。Zeonの没落貴族サハリン家の出身で、優秀で容姿端麗なこの兄妹は、Zeon建国の父を父親にもちながら、ザビ家のZeon乗っ取りによって国を追われたシャアとセイラの兄妹を思い起こさせる。兄ギニアスは、金髪碧眼、妹アイナは、緑がかった銀髪に濃い碧眼と言う容貌から、Zeon建国時代の指導者たちは、独逸や北欧からの移民が中心だったのかもしれない。まあ、西欧の貴族が日本人の抱く典型的な貴族像ということなのでしょう。

08小隊は、Original Gundamと同時代を扱った作品であり、Originalの外伝と言った位置づけなので、時代考証的に細かい点で筋が通らないと言う批判が、時にManiaから起こるようだ。例えば、シロー等が乗る陸戦型Gundam量産機の登場や、その性能がZakuに比べて強すぎるなどなど。しかし、それらの批判は、理屈や科学に偏った立場の批判で、この作品の本質を突いたものとは言えない。Originalの主題の一つである人の革新New Typeなど一切登場しないこの作品において、シローの強さは、彼の本質そのものである理想主義から来る心の強さであり、根性と創造力で機械にさえその性能以上の力を発揮させる「気」の強さなのである。天風哲学に言う「この世の中は、苦しいものでも悩ましいものでもない。この世は、本質的に楽しい、嬉しい、そして調和した美しい世界なのだ。」と言う思想を体現した人物なのであって、自らの言葉を実行すべく、危険な作戦にも身を投じるが、隊員の誰一人として犠牲になることなく生還しているのは、彼が自ずと引き寄せる強い運気によるものなのだろう。その点についは、第2話あたりの早い段階でサンダースJr.が「この男の運の強さにかけてみよう」と言うような発言をしている。

シローの理想主義を曲げない生き方は、軍隊と言う組織と調和するものではなかったが、当初は彼と距離を置いていた女傑カレン・ジョシュア曹長など他の隊員の心を開かせ、08小隊は、次第に結束力を増して行く。この作品の主要な女性の登場人物は、アイナの他、隊員のカレン、民間人でゲリラの領袖を父に持つキキだが、年齢は、20台半ばのカレン、二十歳のアイナ、17歳のキキの順だ。面白いのは、目の描き方で、女傑のカレンはつり目、若いが気丈なキキは普通かややつり目気味、そして、しっかり者ながら受身の人生を過ごしてきたアイナはたれ目である。

アイナは、病身の兄ギニアスに代わって、開発中の新兵器アプサラスを操縦するPilotでもあった。アプサラスは、技術将校であるギニアスが戦果を上げるために、そしてサハリン家再興の切り札として、その開発に没頭する大量殺戮兵器であった。サハリン家再興のために病身を削る兄に対する負い目から、兄の思い通りに生きてきたアイナは、元々の優しい性格のためか、苦悩を抱えて生きてきたようだ。その彼女は、宇宙で地球に着任する途上のシローと干戈を交え、偶然が重なって、お互いの存在を知るようになる。MSに比べ大した戦闘能力もないあり合わせのBallを使って、思いもよらない攻撃を仕掛けてきたシローに、彼女のZakuは苦戦し、二人の搭乗機は大破して、脱出。二人は生き延びるために助け合う道を選ぶ。この際、シローは、アイナに一目惚れ、アイナも兄とは全く違う型の創造力に富んだ理想主義者シローに心惹かれるものがあった。その後、第7話「再会」で、再び戦場で相見えることになる。