エウレカ徒然備忘録

時事報道への感想を中心に、ときにアニメDVDを使った英語学習法などを徒然書いています

機動戦士ガンダム第08MS小隊−その2−

隊員たちがシローのことを、当初は馬鹿にして、後半になるとその人柄に親しみを込めて「アマちゃん」と呼んだりしているが、英語版だと、unmatured、amateurと言った具合に洒落るのだろうか?

さて、エルドア伍長という感度の良い耳を持った斥候を擁する08小隊は、早くからZeonの巨大新兵器の存在を把握しており、試験飛行を重ねるアプサラス待ち伏せして攻撃を仕掛ける作戦に出る。砂漠の熱波の中、待つこと5日目にして、遂にアプサラスと遭遇。しかし、アプサラスに魅入られたように立ち尽くすミケルを救うためにMSで体当たりを仕掛けたシローは、ガンダムの左腕を損傷、同じく損傷を受けたアプサラスに取り付いたままヒマラヤと思われる高山地域まで制御の利かないまま飛行を続ける。そこで、アプサラスの操縦士があのアイナであることを確信したシローは、アプサラスの機体の上を歩いてその操縦席に近づくと、アイナが姿を現し、二人は2度目の戦場における邂逅を果たす。

アイナから予備のPartsをもらってGundamの再起動に成功したシローは、制御の利かなくなったアプサラスを不時着させるべく、Gundamの最高出力でアプサラスを支えるが、不安定な落下を止められず、アイナはシローだけでも生き残るよう離脱を勧める。しかし、ここで諦めて想い女(びと)を死なせるくらいならば、自分も共に死のうと離脱を拒否するシロー。この辺りは、シローが自分の思いに殉じることが出来る真の理想主義者ぶりが端的に表現されている。地上に着地しても停止しないアプサラスにもう後がないという瞬間、「アイナっ、好きだ」と自分の気持ちを告白したシロー。奇跡は起こり、アプサラスはぎりぎりの所で停止するが、シローのGundamは崖下に転落、辛うじて落下傘降下で難を逃れたシローは、砂漠での待ち伏せ時の装備のままであったため、吹雪の中意識を失ってしまう。

少なくともシローの装備よりは耐性の高いNormal Suitのアイナに崖下で救助されたシローは、凍傷に罹るも、アイナとつかの間の愛を確かめ合う。この二人は、元来「善」なる資質を多く持った人間として描かれてはいるが、それぞれの心には、超えなければならない大きな屈託があって、シローの場合は、Zeonに対する激しい憎悪、アイナは、兄ギニアスの手足になって意にそぐわない殺戮兵器の操縦を行っていることだった。シローは、アイナに出逢い、彼女を愛したことで、味方の兵士にしか向けられていなかったその博愛主義をより普遍的な立場に高めて行く、アイナは、シローと言う男を知って、兄の呪縛から自らを解放とうとするようになる。

ちなみに、Amazonの作品批評欄で「ヒロインのアイナ・サハリンは、おそらくガンダム史上最もピュアでキュート。」という志田英邦氏のコメントは、Gundam作品ほとんど見ていない私は何とも言えないが、アイナ・サハリンが男の立場からすると理想のヒロインの最高峰に位置すると言う点では、志田氏の意見に全面的に賛成する。しかし、アイナが自らの屈託を乗り越えるためには、シローと言う男が必要不可欠だったと言うところが、アイナ・サハリンの限界でもある。なんせ、この女性(ひと)は、子供のときはサハリン家の大番頭格のノリス大佐が父親代わりで、長じてからは、兄ギニアスと二人三脚で生きてきたわけで、娘時代から一人で自立して生きてきたセイラさんなどとは、違うのですね。しかし、これはこれでアイナの良さなのだと、私は否定しない。シローが極限状態の戦場で出遭ったにもかかわらず、一目惚れしてしまう必然性は、十分描きこまれていると言えます。

つかの間の邂逅から、Gundamが発した救難信号によってそれぞれ駆けつけた救助隊に保護されたシローとアイナを待っていたのは、軍の査問委員会でのSpy容疑に関する尋問と病の進行によって心をも病んで行く兄ギニアスからの容赦のない疑いの目であった。その中でも、二人の心は最早後戻りすることはなく、「敵の中にも良い人はいるのです。」と言う理想論を展開して、軍上層部の失笑を買い、兄の妹に対する疑いと憎悪を増幅させてしまう。

それぞれの屈託を克服したかに見えた二人だが、これからそれぞれの軍内部における二人の立場は、ますます困難なものになって行くことは容易に想像できる。物語りも佳境に入ってきた感じです。