エウレカ徒然備忘録

時事報道への感想を中心に、ときにアニメDVDを使った英語学習法などを徒然書いています

ダリフラの感想_その2

 ダーリン・イン・ザ・フランキス(以下「ダリフラ」という。)は、物語の中で張られた伏線を話の進行に伴い回収していくという点では、これまでの世界観ロボットアニメの成果を反映しているということができると思います。ただ、次の2点は物語の中で明快な回答が提示されたとはいいがたいので、ここで個人的な解釈を披露してみたいと思います。

 

1.ゼロツ―の変容

 

 第一の疑問点は、幼少期に全身が赤い肌で青い血が流れていたゼロツ―が長じて肌の色は普通の人間と変わらない肌色になり、血の色も赤くなっていたのはなぜなのかというものです。

 

 この答えとして考えられる仮説は、

(1)ゼロツ―は、フランク博士が持ち帰った叫竜人の生き残りである叫竜の姫の髪の毛を材料に、そのクローンとして生み出された娘ということになっています(第21話)。とはいえ、彼女を生み出す過程で、叫竜人の髪からとった細胞だけでクローンをつくり出すことは至難の業だったはずで、おそらく、マッドサイエンティストは人間の遺伝子情報なども利用したことと推察できます(叫竜人の生態は人類と酷似していた)。特に、Franxxの稼働実験中に事故で亡くなったフランク博士の妻、彼女は不老不死の技術を生み出す研究の中心人物の一人であったにもかかわらず、出産を望んでいたのです。ゼロツ―の特徴的な下まつげが故人のものと似ていることから、亡くなった妻の生前の想いに応えるために彼女の遺伝子情報をゼロツーに注ぎ込んでいるのではないかという一つの推論が成立すると思われます(第19話)。

 ということは、ゼロツ―は叫竜人と人類の両方の特徴を兼ね備えたハイブリッドな存在ということになります。そのため、成長するにしたがって人間の要素が角や牙を残してはいるものの前面に出てくるようになったという仮説です。

 

(2)上記に加えて、さすがに赤い肌と青い血では人間に混じって生きていくのは厳しいだろうということから、薬物などの医療的な措置が施されて人間に近い形態を保っているという仮説です。この仮説に立つと、物語の中でしばしば言及されているメンテナンスというのは、人ならざる存在に対して施されている検査と医療的な措置のことと解釈できます。

 

(3)もう一つの仮説は、次の疑問と被ってきます。つまり、対叫竜戦闘用のロボットFranxxは男性と女性のパートナーが共同で操縦するのですが、ゼロツ―のFranxxのStreliziaに3回以上搭乗できた男性パートナーは皆無ということについては、比喩的な表現をすると、ゼロツ―が男性パートナーの人間の存在を吸い取ってしまうかのような現象が起こっているという仮説を設定することもできます。ゼロツ―は、ヒロと出会うまでに多くの男性パートナーを犠牲にして人間の遺伝子情報などを彼らから吸い取っていたため、人間の形態に近い容姿になっていたのではないでしょうか。こう考えると、Franxxに乗って叫竜と戦ってこれを倒せば倒すほど自分は人間に近づけると信じ込んでいるゼロツ―の言もあながちでたらめではないということになります(第6話、第12話、第20話)。

 

2.ゼロツ―のパートナー殺しの解釈

 

 第二の疑問は、ゼロツ―のStreliziaに搭乗した男性操縦者(Stamenという。)は3回目に亡くなるか、廃人のようになってしまう現象が起こっていた理由です。主人公のヒロがパートナーとして登場してくるまで、犠牲者は100人以上というのですから、ゼロツ―は文字通り化け物ないし魔物そのものだったわけです。

 

 ここで、Franxxについて若干の説明を加えると、Franxxとは、太古の時代に宇宙からの侵略者と長年にわたり戦い続けた結果、自らの身体を生物兵器に進化させた叫竜人についての研究を基にフランク博士が作り上げたロボットで、女性の操縦者(Pistilという。)がFranxxと一体化した上でStamenが主な操縦を担当するという仕組みになっています。操縦中にパートナーの男女の意識の共有化が起こり、また、操縦者の老化が進むという弊害もある危険なロボットなのですが、叫竜の遺伝子情報を持つゼロツ―の場合には普通の人間のPistilをはるかに上回るFranxxとの親和性があると思われ、パートナーとは単なる意識の共有などというものではなく、Franxxを通した遺伝子レベルでのやり取りが行われていると推測されます。そのとき、ゼロツ―は人間の遺伝子情報を吸い取り、パートナーであるStamenにはゼロツ―の叫竜人の情報が送られるとすると、通常の人間のPistilの場合でさえ、老化現象などの弊害の出る代物ですから、ゼロツ―がPistilとなったときのパートナーに与える負担というのはとんでもないものになっていたのでしょう。Streliziaに一回だけ試乗したミツルが血も肉も魂も吸い取られると表現したのは、恐らくそういうことだったと考えられます。

 

 ヒロの場合も、2回目の搭乗でかなり身体に異常が見られ、3回目で途中まで激しい衰弱が現れ、仮死状態になってしまいます。ところが、幼少期に偶然にもゼロツ―の青い血を身体に取り込んでいたことから、免疫反応のような身体の適応現象が起こり、ヒロは急速に回復し、最後には13部隊の協力も得て巨大叫竜の進撃を退け、プランテーションを護ります。この戦いの後、ヒロはゼロツ―と何度でもStreliziaに搭乗できるStamenとなります。このことが、何を意味するのかといえば、ヒロの身体に人間であるにもかかわらず叫竜人の遺伝子レベルの情報が流入してきていることを意味し、極端な言い方をすればヒロの叫竜人化が少しずつ進行してゆくことになるのです。これをゼロツ―の側から見てみると、ヒロから得られる人間の遺伝子情報が戦えば戦うほど少なくなって行くということになり、いくら戦って叫竜を倒しても人間に近づく実感が得られないでイライラを募らせることになってゆきます(第10話、第11話)。しだいに角と牙が伸びてゆく自身の姿を見てイライラが頂点に達し、やけくそ氣味のゼロツ―は、ヒロを自分と同じ化け物にしてしまえとか、ヒロの命を食い尽くしてしまうほどに叫竜と無茶苦茶な戦いを続けるといった狂った考えに憑りつかれてしまうのでした(第12話)。