エウレカ徒然備忘録

時事報道への感想を中心に、ときにアニメDVDを使った英語学習法などを徒然書いています

ダリフラ感想_その3

 ダーリン・イン・ザ・フランキス(以下「ダリフラ」という。)の感想_その2でゼロツ―の幼少時とPistil(Franxxの女性操縦者)になってからとの外観の変容について考察を行いました。続いて、ゼロツ―の内面の変化について考えてみます。

 

1.登場時から14話まで

 

 ゼロツ―が抱いていた願望とは、ラボに閉じ込められて虐待とみなされるような実験が繰り返されていた幼少期に、一時的でしたがラボから救い出してくれて外の世界を見せてくれた少年に人間になった姿でもう一度出会いたいというものでした。また、世界を支配するAPEたちから叫竜を倒せば倒すほど人間に近づけると教えられ、そう信じ込んでいたのでした。

 彼女にとって最も重要なことは、「自分が人間になること」であり、叫竜と戦い、これを倒すことは人間になるための手段、そして、Franxx Streliziaに搭乗するのは叫竜と戦うための道具だからで、その過程でパートナーであるStamenとして一緒に搭乗してStreliziaを操縦するパートナーを死に至らしめることなど、全くどうでもよいことであったのです。しかも、APE直属の親衛隊の一員として各地を転戦して回っていた彼女は、世界の仕組みや外の世界のことについて、聡明な彼女のこと、ある程度のことは分かっていたと思われます。この世界に存在する人間は、裕福で不老不死の施術を受けることのできた「オトナ」とそのオトナ達を護るためにFranxxを操縦して戦うためだけに生み出された「コドモ」に厳格に分けられ、コドモ達は要塞都市プランテーションの中のトリカゴと呼ばれる区域だけにしか居住の自由が認められていないこと、かつて、人間は外の世界に居住していたが、マグマ燃料の採掘による環境の悪化と叫竜の出現によって外の世界を放棄したことなど、第13部隊のコドモ達が教えてもらえなかった基本的な知識を当然持っていたと考えるべきです。

 

 そこで、第5話の死を覚悟してもなおStreliziaに3回目の搭乗を試みようとするヒロの行く末を心配するイチゴが深夜ゼロツーにヒロに無理をさせてくれるなと頼む場面、2人の女性のヒロに対する想いも絡んで険悪な雰囲氣になります。

イチゴ「あなた、ヒロを利用するつもり?」、ゼロツー「ダーリンは僕のものだ」

イチゴ「死んじゃうかもしれないんだよ」、ゼロツー「そうだよ、死んだらそれまでさ」

イチゴ「バシッ!(平手打ち)、人でなし、あんたはやっぱり人間じゃない!」

ゼロツー「人間、人間だって? じゃーさ聞くけど、君たちのいう人間って何さ?」

 このあと、イチゴの動揺は言うに及ばずですが、ゼロツーも少なからず心の乱れがあったようで、降り始めた雨に打たれて朝を迎えるのでした。迎えに来たヒロに悪女の顔でもう一度3度目の搭乗を確かめる場面で5話は幕を閉じます。おそらく、このときのゼロツーは自らの命も含めて死というものに深く向き合ったことがなかったと思われます。過酷な人体実験が繰り返された幼少期から、Franxx Streliziaでの戦いに明け暮れる日々の体験が彼女をして死をごく軽いもののように受け止めさせるに至っていたのでしょう。

 

2.15話グランクレバスの戦いとMistilteinnでの数箇月

 

 3度目の搭乗からも無事に生還したヒロ。少なくともヒロに関してはゼロツーのパートナー殺しの噂が嘘であったということになり、正式のパートナーとして13部隊に所属するパラサイトとなったゼロツーとヒロ。しかし、ヒロの方でその時の記憶が人為的に消去されていたために、ヒロが幼少期に出会ったダーリンその人であったことにゼロツーが氣付くのは、後にいくら叫竜を殺しても人間になるどころか徐々に角と牙が伸びて化物のように変貌する自分の姿に狂ってヒロの命さえ奪い取ってしまうほどの同化現象を引き起こしてFranxxの中でヒロに襲い掛かったまさにその時でした。この出来事の後、重体となったヒロの身体を氣遣う部隊のコドモ達とゼロツーの行き違いが生じて、とうとうゼロツーは同僚のコドモ達に暴行を加え、これを見たヒロから化物と言われたために、結局、彼女が13部隊を去ることになるのでした。

 人間ごっこはもうおしまいと、親衛隊に戻ってからは自暴自棄の無茶な戦いを続けるゼロツ―は用意された相当数のStamenをすべて死に至らしめ、グランクレバスの戦いに参戦した13部隊の前にStampede modeの野獣のように変わり果てたStreliziaの姿を現します。化物の姿になり果てても必死で叫竜と戦い続けるゼロツーを目の当たりにしたヒロは、ゼロツーと再開してもう一度Streliziaに乗ることを決意します。イチゴとゴローのDelphiniumの助けもあってゼロツーのもとに辿りついたヒロは、自らを化物といい涙するゼロツーをゼロツーのまま受入れ、「俺たちは2人で1人だ」と抱きしめ口づけを交わします。Streliziaは2人の想いが再び重なったことに即座に反応して、真の姿を取り戻し、超弩級の巨大叫竜を撃破、グランクレバスの外壁破壊にも成功して作戦を勝利に導く重要な役割を果たすことになるのでした。

 この戦いの後の数箇月、ヒロとゼロツーは他の13部隊の仲間とともに、不自由ながらも戦いのない幸せな共同生活の日々を送り、ゼロツ―は望んでいた真の人間らしさを心に宿らせるようになります。そのことを象徴的に表しているのが、第18話で一人絵に興じているゼロツーが、突然現れたStreliziaに搭乗したことによって命を落としたStamenたちの幻影によって闇に飲み込まれそうになり苦しむ場面です。これまで、何の痛みも感じなかった彼らの死であったはずなのに人間らしい心が生まれてくるにつれて重くのしかかってくるようになったことを表していると解釈できるのではないでしょうか。