エウレカ徒然備忘録

時事報道への感想を中心に、ときにアニメDVDを使った英語学習法などを徒然書いています

機動戦士ガンダム00の脆弱性

昔々、漫画好き少年の頃、お遊び程度に漫画を描いていました。当時読んでいた「漫画の描き方」みたいな参考書に漫画におけるデフォルメ(仏語のdeformer)のことが書いてあったのを思い出します。ここで、deformerと言っているのは、変形すると言う本来の意味から、漫画においてはそのままを写すのではなく、誇張された描き方で人物や物を描き出すと言うことでした。劇画の流行前の手塚漫画や石ノ森漫画のあの描き方です。

何でそうするのか、書いてあった理由が思い出せないのですが、その方が速く描けるからと言う経済的な理由の他に、まず、その方が人物の表情や性格がより鮮明に描き出せるのだと思います。次に、読者があまりにRealな絵に比べてdeformerしたものにはある程度リラックスして接することが出来るのではないだろうか。さらに、二つ目の理由とも関係があると思うのだが、漫画が芸術として昇華される可能性を残すことが出来る事も理由としてあげられるかもしれない。

その後、「巨人の星」に代表されるスポーツ根性物が一世を風靡するのと同時に、よりRealismを追求した劇画の時代が訪れます。劇画の流れは、スポ根時代が終わっても依然終わっていないのかもしれませんが、だからこそ、漫画やAnimeにおける広義のdeformerの重要さは益々高まっているのではないかと思えるのです。なぜなら、漫画やAnimeにはRealism以上に夢があることが大切で、それがないとつまらないからです。

さて、最新作の「機動戦士ガンダム00」の第一話、二話を見てみました。ちと早いのですが、9割以上の確率で失敗作になるのではないかと危惧しています。土曜の午後6時はTBS Animeの金の卵時間ですから、金はかけているようです。絵は綺麗だし、Gundamも格好いいのです。しかしだ、第二話の冒頭で紹介された、米国を中心としたUnion(もちろん我が国はその一員と言う設定)、中国、露西亜、印度の人革連、新欧州連合AEUの3Blockが世界を支配する24世紀と言う世界観に一工夫も二工夫もした跡が感じられない。それどころか、Seed DestinyBlood+に見られた、現実世界で起こっていることの実に底の浅い情勢分析に基づく取るに足らない思想表明になるのではないかととても心配だ。あの超のつく駄作Gundam Seed Destinyを手がけたこの時間帯のTBS&Companyのことだから何があってもおかしくないと見るべきでは...。

現実の世界情勢に賛成や反対を唱えるPropaganda Animeを作ることは、簡単なことだ。しかし、それらはかつての世界大戦参戦国や現在の独裁国家が製作した宣伝映画の多くが芸術になり得ないのと同じ理由で、良い作品にはならないだろう。Anime作品はその存在自体が目的なのであって、直接的な思想表明はそれ以上のAnimeの目的にはなり得ない。思想まず有りきの作品は、どう言う訳か、つまらない作品になり易い。そういう意味での漫画・AnimeにおけるDeformerの重要性を指摘した30年前の参考書の主張は生きている。Gundam00の欠点は、ここまで見た限り、その世界観にDeformerの発想が無いことだ。

話は変わるが、自衛隊の特措法延長問題が紛糾する中、絶妙の間合いで米国海兵隊の少女暴行事件やら守屋防衛省事務次官の接待収賄疑惑と出てきています。日本にも米国にも軍関係で腐った輩はいるのかもしれないが、表沙汰になる時が時だけに、単なる偶然なのかを考えてしまう。