エウレカ徒然備忘録

時事報道への感想を中心に、ときにアニメDVDを使った英語学習法などを徒然書いています

NHKラジオで日本の財政は健全という解説

 朝の6時40分頃からNHKラジオで放送されている「社会の見方・私の視点」という番組があります。かつて「ビジネス展望」という番組だったころは、解説者が非常に偏っていて一定の傾向が見られたのですが、最近は解説者の人数が増えて、以前よりはかなりましになってきた印象です。ビジネス展望の頃からの出演者である経済アナリストの森永卓郎氏が、今月3日文化の日に行った「日本の財政は悪いのか」と題する解説は、既に三橋貴明氏などが各所で散々指摘されてきたことですが、NHKで堂々と流されることはなかった内容のようで、聞き手の野村優夫アナウンサーが今まで耳にしたことのない斬新な見方で信じられないというような反応をされておられたのが印象的でした。

 11月3日の放送で森永氏が述べた内容は以下の通りです。

1.財務省は、最近「地方交付税の抑制」、「高齢者医療の受益者負担増」など、一貫して日本の財政は世界的に見ても最悪の状況という認識の下、これを改善するためには歳出の削減と増税が急務であるという立場を貫いています。しかし、それならば、なぜ日本国債がこんなに買われてマイナス金利がついているのか、実際に破綻したギリシャ国債などは、一時的に40%をつけたのに比べあまりにかけ離れた市場の反応をどう説明するのことができるのか、との疑問が生じてきます。

2.その解答は、実は日本の財政が世界で最も健全な部類に入るといってもよいと考えられているからなのです。財務省が今年1月発表した国の貸借対照表によれば、貸方、つまり政府債務は1172兆円です。これだけ見ると確かに政府債務は1000兆を超えています。しかし、借方には679兆円の国の資産があるのです。従って、純債務は492兆円で我が国の1年間のGDPの額の中に納まります。さらに今年3月独立行政法人など準政府機関を含めた連結財務諸表が出ているのですが、これによれば、平成26年度の純債務は439兆円です。この数字は、何と平成25年度の451兆円から10兆円余り減少しているのです。政府債務が一貫して増え続けているという主張も、純債務で見ると正しくないということがいえるのです。

3.加えて、この連結財務諸表に日銀は含まれていません。日銀の財務諸表を見ますと、借方に349兆円の政府国債があります。つまり、連結しても構わない子会社が349兆円の国債保有しており、これも連結すると相殺されてしまう債務というわけです。さらに日銀は、年間80兆といわれる大量の国債購入続けていますが、それにもかかわらず、最近の物価は、また下がっているような状況です(註)。マネタイゼーションによるインフレのおそれなど今のところ全くない状況です。

4.借方には679兆円の国の資産があるといっても、実際に売れないではないかという反論に対しては、例えば高速道を事業を民営化して、その株式を市場で売却したイタリアの例などがあり、やろうと思えば売却可能な資産がほとんどです。だからといって、現実に売却しなければならないという主張ではないのですが。

(註)総務省が10月28日発表した9月の全国消費者物価指数(CPI、2015年=100)は、生鮮食品を除く総合が99.6と、前年同月比0.5%下落した。下落は7カ月連続。8月は0.5%下落した。食料・エネルギーを除く「コアコア」のCPIは100.4と横ばいだった。