エウレカ徒然備忘録

時事報道への感想を中心に、ときにアニメDVDを使った英語学習法などを徒然書いています

プロパガンダ翻訳の危うさ

 明治維新以降、我が国は高等教育を日本語で行うという方針を打ち出し、西欧先進国の文化や科学技術の概念を日本語に翻訳して誰でも日本語で高等教育が受けられる教育体制を整備してきました。これが正しい選択であったことは、日本人のノーベル賞受賞者の実績一つとっても明らかになることと思います。

 しかし、この反動といえるのかもしれませんが、日本人の英語力は必ずしも高い水準いあるとは言えません。このことを利用したプロパガンダのようなことは、全く感心できることではありません。その代表例ともいえるのが、United Nationsを「国際連合」と翻訳したものです。これは、「連合国」とすべきところ故意に行った誤訳と思われます。連合国を国連と訳してしまうと今の国際秩序の本質が全く意味不明なものとなってしまいます。

 そして、三橋貴明氏の著作などを読まなければ、氣がつかなかった国内経済に関するプロパガンダ翻訳が、Government Debtという英語を、なぜか「国の借金」、「日本の借金」と訳しているものです。三橋氏が指摘するのを待つまでもなく、Government Debtは「政府の負債」です。「政府の負債」であれば、借り手が「政府」であることが誰にでも分かります。しかし、「国の借金で破綻する!」、「日本の借金は1000兆円を超えており、日本は借金大国」といった言い回しをされると、国民はあたかも自分たちが借金しているような印象を覚えます。

 また、ここ数年使われるようになってきた言葉に「財政ファイナンス」というのがあります。財政ファイナンスを英語に訳すと、ファイナンスファイナンスになってしまいます。しかし、中央銀行国債買取は正しい英語ではmonetizationといい、「国債マネタイゼーション(貨幣化)」なのです。

 三橋氏は、monetizationを「財政ファイナンス」と敢えて翻訳した理由について、「国債の貨幣化」という言葉を使うと、中央銀行国債を買い取ると「貨幣」と同じになってしまい、政府の財政破綻の可能性がゼロであることが露呈してしまうためであると言い切ります。そして、新聞・テレビが「財政ファイナンスは悪。決してやってはいけない」という印象操作を行い、「国債を発行し、財政出動を。国債を日銀が買い取れば、政府の財政破綻の可能性はゼロ」という事実を言う論客、政治家、学者などに対し、「それは財政ファイナンスに該当する!」と叫び、口を封じるという「手法」が使われていると主張し続けておられます。当初は本当かなと疑っていたのですが、この5年間くらいの出来事を振り返ってみると、どうも三橋氏の主張の方に分があると思うようになりました。どうも最近の舶来の概念の導入の仕方は、明治期の先達たちとは異なり、おかしな意図が隠されていることに、残念ながら氣をつけなければならないようです。

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