エウレカ徒然備忘録

時事報道への感想を中心に、ときにアニメDVDを使った英語学習法などを徒然書いています

国策産業は買いか?

道路特定財源一般財源化議論、月内から本格化

 ガソリンや自動車にかかる税金を道路建設に充てる道路特定財源一般財源化を巡る議論が月内から本格化する。安倍晋三首相の財政運営の最初の試金石となるが、国税で約3兆5000億円にのぼる財源の見直し規模や使い道を巡り、財務・国土交通両省が対立。自民党の道路関係議員や税率引き下げを求める自動車業界を巻き込み、調整は難航必至だ。政府内では「抜本見直しは先送り」との見方も出ている。

 道路財源の議論が本格化するのは、厳しい財政運営が続く中で「余剰」が見込まれるためだ。財源のうち旧本州四国連絡橋公団の債務返済に充ててきた分(2006年度で4500億円)が今年度で終了。さらに来年度は道路関連税収の増加と道路整備の抑制で、5000億―7000億円規模が余る見通しになっている。    (2006/10/23 日本経済新聞

前々回の総選挙時、民主党は、高速道路無料化論で論陣を張った。日本では少々荒唐無稽な話のように思われ、線香花火のようにいつの間にか消えてしまった。多分、具体的に実行する段になると、様々な技術的問題も生じるのだろう。しかし、個人的には、やってみる価値のある施策だったのではないかと思っている。先進国で、高速道路を一般的に有料にしているのは、むしろ少数派だ。例えば、米国は、当初全国に鉄道網を張り巡らし、鉄道は主要産業になったが、程なく自動車産業の振興に方向転換し、広大な国土にくまなく高速道路網を建設し、通行料を原則無料にした。加えて、燃料のガソリン価格を低めに抑えているので、自動車産業の成長は、大いに促進された。

無料の高速道路では、第一に、料金徴収のための人件費や施設費がそっくり省略できる。第二に、入口と出口を多数こしらえる事ができるから、より多くの地域に高速道路敷設の恩恵をもたらすことができるだろう。だから、取敢えず自動車産業を益々振興しようと言うことならば、記事の産業界の主張はもちろん、高速道路の無料化まで視野に入れるべきなのだ。逆に、もうこれ以上国内に車が普及するのは、環境問題を悪化させるだけで好ましくない。または、これ以上化石燃料に依存するのは、国内のEnergy政策上よろしく無いという政策判断によるならば、鉄道網を今以上に充実させ、公共交通の料金を低めに抑える一方、車の値段や維持費およびその通行料などは値上げして、鉄道などの利用を促して行くということも考えられるだろう。

しかし、取敢えずと書いたのは、長い目で見ると、国策による振興は必ずしも思い通りにはならないとも思えるからだ。恵まれた条件の米国自動車産業は、一時大いに栄えたが、今やBig Threeの内、Chryslerは、単独では存在せず、今年になってGMもFordも青息吐息の状態であることが判明した。一方、燃費が良くて故障の少ない日本車は、原油価格の高騰、高止まりを追い風に、世界市場で好調を維持している。恐らく、巨大な国内市場という恵まれた条件を享受した米国車は、輸出や他国への進出をしなければ生き残れないと言うような苦労経験せず、温室育ちになってしまった。逆に、国内市場で様々な制約を課せられるなかで、苦労してきた日本勢など外国車は、燃費効率の良い車、事故時の安全性の高い車など工夫を凝らし、徐々に市場を奪っていったのではないだろうか。

また、しばしば例に挙げられるのは、日本のAnime産業である。これらは、政府が始めからごちゃごちゃ手を突っ込むほどのものではないと思ったのか、公的な介入は一切なく、その結果、誰にも頼らずにこれだけの発展を見た、と言うのである。確かに、不況などで、まともな就職機会が少なくなり、社会が暗くなると、良い小説が生まれる傾向にあるとも言われる。

果たして、余った金である。政府は借金を減らすことに専念し、産業に関しては極力余計なことをしないのがやはり得策なのかもしれない。