エウレカ徒然備忘録

時事報道への感想を中心に、ときにアニメDVDを使った英語学習法などを徒然書いています

2.11エジプト政変

先月末から18日間に及んだEgyptにおける大規模な抗議デモは、2月11日に至ってムバラク大統領の辞任及び権力の最高評議会への移譲という形でひとまずの決着を見ることになりました。

そもそも今回の反体制デモのきっかけになったのは、隣国Tunisiaで起きた政変であったとされています。Tunisiaの総人口は1000万人、1人当たりGDPが2010年で9500ドルほどでしたが、失業率は14%に達していました。一方のEgyptは、人口8000万人超、1人当たりGDP6200ドル、失業率9.7%、貧困層といわれる人たちの人口は全体の20%に達し(出典:CIA Factbook)、ムバラク治政30年弱の間、貧困を脱することができなかったことが伺えます。

また、背景にある大きな流れは、1990年代に確立した一極覇権が、2008年の金融危機前後から明らかな後退となって様々な局面で顕在化してきていることです。今回の政変も、その顕れの一つとみることができるかもしれません。

今回のデモにおける犠牲者の数は未だはっきりしませんが、2月1日の段階で国連人権高等弁務官は、同国での死傷者数について「確定的ではないが、300人程度が死亡、3000人以上が負傷したとの情報がある」と述べています。死者が数千人というようなとんでもないことにならずに済んだのは、ムバラク大統領の出身母体でもある軍部が、早々に国民に銃を向けることはしないと宣言し、その約束を守ったことが大きかったように思えます。

ムバラク大統領という人の前半生は、軍の超選良として出世街道を駆け上ったというのが適当で、軍部への影響力の強さが超長期政権の権力を支える重要な要素になっていたことは想像に難くはないのです。それにもかかわらず、軍部は相当に早い段階から大統領を見限ったとしか思えない態度表明をしており、これが結果として、ここまで内乱や内戦に繋がるような最悪の事態を回避できた最大の要因になっていると考えます。Egyptian Armyは、かつて同国の王政廃止の政変に立ち会った際にも、軍規を乱すことなく立派な行動をとったと伝えられ、良き伝統は継承されているようです。こういうところに「国柄」というものが垣間見られるものなのかもしれません。同国の政治混乱は、一時貴重な古代文明の歴史的出土品が荒らされるなど心配もされていましたが、5000年以上も前に高度な文明を持ち得た歴史は伊達ではないことを見せてくれた感じがいたします。

我が国にしても、英国の名誉革命に匹敵する最小限の犠牲者と内乱の規模で明治維新を成し遂げた栄光の歴史を持つものの、ここ数年の方向の定まらない混迷ぶりは、やはり大きな流れの影響があるのでしょうか。

それにしても、今年になってにわかに持ち上がってきた大相撲の八百長問題、この事件に関する針小棒大の類に見える過剰報道と過剰反応は全体よく分かりません。完全な村社会で行われる競技において、八百長の臭いが全くないと信じていた国民が一体どのくらいいたのか、世論調査でもしてみたい気分です。確かに金の絡んだ八百長が上位力士にまで横行すれば、相撲人気は衰えるのでしょうが、逆に膿を完全に出し切る措置を度を超えて進めれば、相撲競技は滅亡へと突き進み、被害甚大になることは十分に想像できます。春場所中止に伴い、既に大相撲を頂点にした周辺産業への影響が見え始めています。この不況下、大相撲にかかわるどれほどの人が収入源を絶たれることになるのか、相撲協会だって責任は取れないでしょう。思うに、賭博とは異なり、犯罪でもない八百長を理由にして早々に春場所中止を決めたのは、相撲協会の判断の誤りだったかもしれないのです。

そのことに気付いたのか、八百長の調査は、力士自身に任意で携帯電話と預金通帳の提出の協力を求める、実に馬鹿馬鹿しいものになりつつあります。力士の個人情報の取り扱いについても、まともに議論すると大問題になりかねません。どうも、八百長をやっていたのは、携帯電話の通話記録で尻尾をつかまれた最初の十両以下数名だけで、他には絶対に有り得ませんと調査委員会が宣言して、決着することになるのではないかと思えてなりません。しかし、ここまで大相撲は汚いものだと過剰報道してしまったのですから、鼠一匹現れない決着に終われば、潜在化した疑惑は残り、大相撲は存続を維持しても徐々に衰退することになるのだと思います。大相撲生き残りの道は、どうも非常に細い道になったのではないかと危惧して止みません。