エウレカ徒然備忘録

時事報道への感想を中心に、ときにアニメDVDを使った英語学習法などを徒然書いています

シェールガス革命のもたらすもの

 現在米国では、シェールガス(Shale Gas)革命なるエネルギー革命が進行中です。シェールガスとは、頁岩(シェール)層から採取される天然ガスのことで、従来のガス田ではない場所から生産されることから、非在来型天然ガス資源と呼ばれています。米国では、1990年代から新しい天然ガス資源として重要視されるようになり、ここ数年で一気に主役に躍り出た格好です。最近の米国における天然ガスの費用はシェールガスのおかげで、日本が輸入しているガスの3分の1程度(2011年)とのことでした。シェールガスに引っ張られて、石油の価格も米国では下落している模様で、欧州の石油と価格差が出てきているようです。

 シェールガス革命は、米国のエネルギー事情を大きく変えつつあります。比較的費用の安いシェールガスの増産により、米国のエネルギー自給率が高まり、2010年6月のマサチューセッツ工科大学の研究では、将来天然ガスアメリカ合衆国のエネルギー需要の40%(現在は20%)をまかなうようになると報告されています。この理由のひとつとしてシェールガスの豊富な供給量があげられています。このことは、米国にとっては中東地域に対するエネルギー依存度を画期的に減らせることを意味し、イラク戦争後の情勢ともあいまって、今後米国は中東地域への介入の度合いを弱めていくことが推測されます。現に、2012年11月29日の国連総会においてパレスチナを「オブザーバー国家」に格上げする決議案が賛成多数で承認され、国連では「国家」の扱いを受けることとなったときも、米国は表立った行動に出ることはありませんでした

 さて、生産費用の安いシェールガスの産出量の増加は、露西亜カタールなどの従来型の天然ガス産出国にとっては厳しい情勢の到来を意味します。特に露西亜は、長年産業の多角化の重要性が叫ばれてはいるものの、依然として石油・天然ガスが輸出の71%を占め、石油輸出が対GDP比15%(2011年)を占める状況にあります。米国のエネルギー輸入依存度が減り、自給体制が整いつつあり、エネルギーの国際価格が下落するということは、石油・天然ガスの輸出頼りの露西亜にとっては明らかにまずい事態です。

 そこで、露西亜の首脳が新たな天然ガスの売込み先として思い浮かべるのは、支那市場と日本市場です。しかし、次の覇権国を狙いかつ露西亜との長い国境線をもつ支那に経済的に依存することはある程度回避しておきたいはずで、賢いプーチン大統領が今目をつけているのは、火力発電の燃料である天然ガスを咽喉から手が出るほどに欲している我が国日本なのでしょう。ところが、我が国がエネルギー安全保障の視点から原発を再稼動させてもよいという決定をしてしまうと、天然ガスの需要は元に戻ってしまいます。つまり、我が国が脱原発に突き進むことで一番得をするのは露西亜という国です。そこで見えてくるのが、共産党社民党未来の党をはじめとする反原発を掲げた左翼政党、そして、露西亜との天然ガスパイプライン構想をぶち上げる鈴木宗男氏などの行動の背景に何があるかです