エウレカ徒然備忘録

時事報道への感想を中心に、ときにアニメDVDを使った英語学習法などを徒然書いています

オバマケアは国民皆保険制度ではない

 オバマケア廃止の騒動について、トランプ大統領の目論見が頓挫した形になっており、新聞各紙などは次のように伝えています。

トランプ氏「失望した」 オバマケア代替法案頓挫に
<【ワシントン=川合智之】トランプ米大統領は18日のホワイトハウスでの演説で、与党・共和党医療保険制度改革法(オバマケア)代替法案が頓挫したことについて「非常に失望した」と述べた。まず廃止法案を優先し、民主党の協力を得て成立をめざす考え。上院共和トップのマコネル院内総務は同日、来週早々にも廃止法案を採決する方針を示した。
 トランプ氏は「複数の州で(保険料が)200%以上増加した」とオバマケアによる負担増の弊害を訴えた。「オバマケアは失敗だ」と強調し、廃止法案を先行して成立させてから代替制度を検討する方針を示した。
 米上院(定数100)は共和党が52議席を占めるが、代替法案成立に必要な過半数の50票が党内の反発で確保できない。マコネル氏は18日、「現時点では共和党で50票を確保できないのは明らかだ」と認めた。「オバマケア廃止法案を来週早々に採決する」と述べたが、廃止法案には共和の3上院議員が反対を表明し、成立の見通しは立っていない。>

 オバマケアとは、すべての国民が民間の医療保険に加入することを義務付けた制度に過ぎないのであって、我が国の国民皆保険のような公的医療保険制度ではないのです。オバマケアによって、一番おいしい思いをしたのは、当然民間の保険会社なのですが、だからといって、オバマケアを廃止すれば、医療保険非加入でまともな医療を受けられない国民が3000から5000万人もいた以前の米国に逆戻りするだけです。

 アメリカでは、公的医療保険は、低所得者、低障害者、高齢者向けのみです。そのため、公的保険に入っていない人が圧倒的に多数です。この大多数の人たちは、そのままだと無保険状態になってしまいますから、職場を通じて、あるいは自分で、民間の医療保険を契約しないといけません。しかし、保険料が払えないなどの理由から、2011年時点では、15%もの人が完全に無保険の状態で生活していたのです。この状況を改善するために成立したのがオバマケア。そのオバマケアの概要は次のようなものです。

(1)アメリカ国民(永住権を持っている外国人、労働ビザがある外国人も含む)に、一定の基準を満たした医療保険への加入を義務づけ、加入しない場合は罰金を課す。
(2)低所得者向け公的保険の加入対象者を拡大する。
(3)政府が定めた貧困レベル以下の人たちに、保険料の税控除を行う。
(4)従業員50人以上の企業に、職場を通じた医療保険加入を促す医療保険は、政府や州政府が設ける医療保険取引所で購入できるようにする。