エウレカ徒然備忘録

時事報道への感想を中心に、ときにアニメDVDを使った英語学習法などを徒然書いています

ソフトバンク携帯

この文化の日週末が、番号持運び制度導入後の雌雄を決する本格的な戦いになるかなと思い、近所のSoft Bank Mobile(SBM)の店を覘いて見ました。人通りの多い通りに面したそこそこ大きな店です。しかし、昼時の来客はまばらな上に、5日まで機種・Serviceの変更は受け付けない等、多くの制約を課しての営業でした。先週のSystem Troubleの影響は、大きかったと言わざるを得ないようです。

孫正義社長が稀代の経営者であることは、これまでの彼の実績が物語っています。今回の携帯参入では、当初「大人のSB」発言を繰り返していたにもかかわらず、直前に豹変。SBM同士の通話およびMailは0円にすると言う奇襲戦法に打って出た。私は、たまたま、記者会見が行われた当日の報道Stationで知ったのだが、Mediaの取り上げ方も孫氏の思惑通り衝撃的なものだった。さすが孫正義&Companyと誰もが思い、携帯の費用の劇的な値下がり、SBMは勝ち組に、と言う印象を多くの人が抱いた瞬間ではなかったか。ところがである。当初からずさんな運用で走り出さない内につまずいてしまった。ADSL立上げの時の反省は全くなかったかのようだ。

大前研一氏は、今回の孫氏の行動を奇襲戦法と言うよりは、番号持運び開始前の市場調査で、手を拱いていればSBMからの流出が大量になることが判明して、やむを得ず採った手段だったのではないかと分析している。事前の市場調査の実態を知らないので何とも言えないが、先週の同社の混乱ぶりと手を打ったにもかかわらず推定で流出が多かったことから見て、大前説は真実味を帯びてくる。

Vodafone買収に要した1兆2000億円にも上る借入れが今後も重くのしかかるSBに対して、DocomoAu双方から厳しい生き残り競争が仕掛けられるのは必至。一転創業以来の危機に陥る恐れが出てきた。ようやく軌道に乗ったかに見えるADSL事業にしても、東西NTTおよびProvider連合が「光」で攻勢に出ており、SoftbankBBの市場占有率を徐々に侵食しているようにも見受けられる。しかし、苦境に立ったときの孫社長の打たれ強さと粘り腰は、これまで何度も見てきたことであり、天才経営者がここで万策尽きるのか、窮地を脱して再び飛躍するのか、注意して見守りたい。

幾多の会社の中には、おそらく、まともな分析手法では計り知れない企業というのも稀に存在していて、戦後間もない頃の豊田自動車など、正にその典型と言える。もっとも、敗戦後何もないところから創業して今日生き残っている大企業は、多かれ少なかれそんなものだったのだろう。時代が違うと言えばそれまでだが、Bubbleの崩壊とその後の経済の混乱は、第二の敗戦とまで言われた時代の変革期である。孫氏一人の存在感があまりにも大きいSBのRiskは強烈に大きいが、現代の洗練された投資理論では保有の説明がつかないような銘柄を少しは持ってみるのも個人投資家ならばいいじゃないか。と思うと、今回の事件で、SBは孫社長の思いつき経営で、会社としての統治能力に疑問が持たれたなどと言う批判は、完璧な明後日の方向への的外れ分析と言うべきではなかろうか。