エウレカ徒然備忘録

時事報道への感想を中心に、ときにアニメDVDを使った英語学習法などを徒然書いています

震災復興の財源は増税?公債発行?

元々は財政再建論者である小生なのですが、ここにきて3.11東日本大震災が我が国を襲い、その莫大な復興費用をどうするかという当面の問題が浮上してきてしまいました。喫緊の今目の前で起こっている課題に対して、かねてデフレの克服が最重要課題であり、菅政権が進めるTPPを阻止する急先鋒の役割を務めてきた中野剛志氏、露西亜から独自の視点で冷徹な国際情勢分析を発信している北野幸伯氏、その他森永卓郎氏を始めとする名の知れた経済評論家多数は、増税に反対であり、少なくとも公債の発行による資金調達を容認しています。一方、原発のエンジニア出身で、かつては日立製作所原発の設計をしていた経歴を持つ、日本でもっとも有名な経営コンサルタントの一人である大前研一氏は、公債発行の増額には反対の立場をくずしておらず、2年程度の期間限定で復興の財源に充てるために2%程度消費税を引き上げることを提案しています。

増税でデフレが益々進み、日本経済は奈落の底に突き落とされるという主張は、確かに傾聴に値すると思いますが、だからと言って、震災前からGDPの2倍を超えていた債務残高の我が国の財政状態をさらに悪化させてよいものなのか、悩んでしまうところです。基本方針として、デフレ克服重視で行くか、財政規律重視で行くかは非常に難しい決断であり、正解はないのかもしれません。

一つだけ言えることは、基本方針が定まらないのであれば、どんな財政政策を試してみても、いずれも上手く機能し始める前に破綻するということではないでしょうか。1997年4月1日消費税の引き上げを断行して財政再建路線に舵を切った橋本政権、金融危機の勃発を受けて一転して財政拡大路線を選択した小渕政権、そして再び国債発行上限枠を30兆円とするなど構造改革を唱えた小泉政権と同じ自民党政権でありながら、その財政政策に関する基本方針は、猫の目のごとく変転してきました。そもそも、短期間にこれだけ行ったり来たりしていれば、どんな経済政策も成功する見込みは非常に低くなるように思えるのです。

そこで、今、正しい財政政策を実施するために指導者に求められる資質は、経済政策に精通していることよりも、優れて国民との意思疎通に長けていることではないかと思います。指導者は、彼が財政政策に関して何が一番大切で、何を具体的にしようとしているのかを、繰り返し繰り返し国民に発信して、少なくとも5年以上は我慢して基本方針に沿った政策をやり続けるということが正しい財政政策を実施するために絶対に必要なことだと思う訳です。