エウレカ徒然備忘録

時事報道への感想を中心に、ときにアニメDVDを使った英語学習法などを徒然書いています

低線量率放射線は怖くない?

現場作業員の方々の文字通り決死の作業にもかかわらず、福島原発事故は一向に終息への道筋が見えてきません。中部大学の武田邦彦教授のBlogに書かれていることが、比較的良心的な専門家のご意見と思い、連休明けまでは放射線の影響をできる限り避けて静かにしていようと考えておりました。

ところが、「福島原発が放出する放射線は低線量率放射線なので、いくら被曝しても全く問題はなく、むしろ、身体に良い影響を及ぼすもので、何ら心配は要らない。」と主張する東大系の学者がいることをNetで知りました。東大医学博士の稲恭宏(いなやすひろ)氏です。稲博士は、世界で初めて従来の放射線治療の約10万分の1以下の低線量率放射線が、副作用を起こすことなく、全身の免疫系、生理系、代謝系、脳・中枢神経系、深部・末梢神経系、筋・骨格系などの諸機能を活性化・調整・正常化し、これまで治療不可能と言われてきた各種難病を含むさまざまな疾患を顕著に改善し、予防医学的にも効果を発揮して、健康寿命を著しく延長させることを発見し、低線量率放射線による治療法を確立したことで知られる放射線治療の専門家です。

稲博士の逃げ道や言い訳をこしらえず、明快に安全と断定してみせる姿勢に、小生も含めて放射性物質の飛散による被曝を恐れ、鬱屈した思いのやり場を失っている者は、一筋の光明を見出し、博士の説がとんでも系の少数説でも何でもなく、真実であって欲しいと願わずにはいられないと思われます。

しかし、稲博士の説を盲信して、普段通りに生活し、汚染されている野菜も水道水も近海魚も摂取してしまうのは、危険負担が大きすぎるのではないかとも思われます。第一に、東大と東電とは、利権でつながっているかのように見える事実がNetで指摘されていることが上げられます。第二に、稲博士がおっしゃる通り、原発事故などなくとも人間は自然界からくる微量の放射線に四六時中身体を晒しています。しかし、今回原発事故でばら撒かれた放射線は、自然界には存在しない種類のもので、人工的に原子炉で作られた放射線と元々自然界にある放射線との人体に与える影響を論ずるとき、それらを一緒くたに論じてよいものか疑問が残ります。第三に、放射線は低線量であっても、長い時間浴び続ければ染色体を壊すため、癌になる確率が高くなり危険であるという通説に対して、これだけ重大な内容の異説であるにもかかわらず、稲博士と同じ説を唱えるものがほかにおられないことをどう考えるべきなのでしょうか。

小生などは、こちらが知りたい結論を曖昧にするために何を言っているのかわからない解説者や専門家とは異なり、稲博士のような学者がいるということを知って、思わず警戒が緩んできているのですが、小さな子供のいるお母さんを始めとする女性などは、警戒を緩めないに越したことはないと思われます。警戒していて、後から安全なことが分かれば、よかったねで終わりますが、警戒を解いてから、やはり放射線は浴びてはいけなかったと判明したとき、これは洒落になりませんから。

しかし、このまま無為無策に状況が推移し、悪化しないまでも原発を囲む広い地域が立ち入り禁止の汚染まみれということにでもなれば、社会に及ぼす損失と悪影響は計り知れません。とんでも系とも受け取れる稲説がYou Tubeに流れるとこれにとびついた人が結構多かったのは、稲説が何らかの形で実証さえできれば、これから福島原発事故に伴い国全体で負担しなければならない壮大な経済的・社会的損失が一気にチャラにできると思われるからなのでしょう。

稲 恭宏博士 緊急特別講演