エウレカ徒然備忘録

時事報道への感想を中心に、ときにアニメDVDを使った英語学習法などを徒然書いています

銀河英雄伝説−その1−

年末の休みに見始めた田中芳樹原作「銀河英雄伝説」にはまっている。1970年代のFirst Gundam、1990年代のEvangelionと時代を代表するRobot Animeがありました。それでは、Bubble経済の1980年代は不毛の時代? などと勝手に思っていたのでした。「銀河英雄伝説」はRobot Animeではないのですが、卓越したSF戦記物の傑作です。Animeは、非常に特殊な形のOVA配信だったようで、最近までこの作品のことを何も知らなかった理由はその辺りにありそうだ。

Wikipediaによれば、「1988年末OVA第1期リリース開始。第1期は登録した顧客へ1話分収録されたVHSビデオカセットが週1回“配達”されるという特殊な通販でのリリース手法で、当時は“ウィークリービデオ”と呼ばれた。このような異例の販売方法から、同じくアニメ専門誌アニメージュでの通販によって驚愕な売り上げをとげた風の谷のナウシカと共にOVAの販売を変えた作品とされている。その後1997年まで、原作本編を4期に分けOVA化が継続。最終的に全110話が製作された。」とのこと。

自然な成り行きとして、田中芳樹の原作小説にも興味を持ち、Amazonで調べてみたところ、徳間書店創元社から文庫本が出ているのを確かめた。書評では、20代で読まないと田中のくどい文章は、かなり厳しいというようなものが多かった。そのため、Animeだけにしておくかと言う気分になっていたが、図書館に立ち寄ったついでに、手にとって見る機会があったので第1巻を読んでみた。若者向けに読みにくい漢字などを平易化したという徳間デュアル文庫版だったせいか、書評のような印象は全然懐かず、むしろ読みやすいくらいだった。ドストエフスキー好きの小生には、このくらいの文章は全く苦にならない、トルストイより遙かに読みやすい。独逸人の名前の方が露西亜人の名前より幾分憶えやすいと言うことなのだろうか...

作品は、銀河帝国と事由惑星同盟との150年以上に亘る長い戦争の歴史の中に現れた二人の天才、帝国軍Reinhard von Lohengrammと同盟軍Yang Wen-liとの会戦を中心に史記三国志風の骨太の大河小説仕立てになっていて読み応えがある。

1巻、少年時代のYangとその父親との会話から、

ルドルフ(銀河帝国の創設者、第1世皇帝)がそれほどの悪党だったなら、なぜ、人々は彼を支持し、権力を与えたのか? 息子の質問に彼の父親は、ほかの人々と多少異なり、こう答えた。

「民衆が楽をしたかったからさ」

「楽をしたがる?」

「そうとも。自分達の努力で問題を解決せず、どこからか超人なり聖者なりが現れて、彼らの苦労を全部一人でしょいこんでくれるのを待っていたんだ。そこをルドルフにつけこまれた。いいか、憶えておくんだ。独裁者は出現させる側により多くの責任がある。積極的に支持しなくても、黙って見ていれば同罪だ...」

敗れた旧与党の首相になれなかった総裁は、「独裁政治と戦う」と一時よく口にしていたが、昨年の総選挙で民主党を勝たせた民衆の潜在意識には、独裁政治とは言わないまでも、誰か指導者に自分達の苦労の全部を一人でしょいこんでもらいたいという思いはなかっただろうか。英雄伝説流に考えると、民主党政治が何かとんでもなく悪い結果をもたらしたならば、それは全て民主党を選んだ有権者である我々の責任だ。それを自覚できない限り、与党がどの政党になろうとも、民主政治は上手く機能しないことになるのだろう。