エウレカ徒然備忘録

時事報道への感想を中心に、ときにアニメDVDを使った英語学習法などを徒然書いています

由らしむべし、知らしむべからず

 「子曰、民可使由之。不可使知之。」(泰伯第八)
 「子曰く、民は之に由らしむべし。之を知らしむべからず。」

 論語に出てくるこの教えは、大衆には情報を公開せず、被支配の対象としてひたすら政府に従わせておくのがよいというような意味で語られることが多いように思われます。しかし、この教えの本来の意味は、可、不可の使い方で明らかなように、「大衆をご政道なり、社会規範なりに従わせ、正しい秩序を維持することはできるが、大衆の一人ひとりに(たとい徹底的に情報公開を進めたとしても)その内容を完全に理解させるということはできない。」ということです。

 ここから導き出される結論は、情報公開を徹底的に進めて、全てのことを住民投票の多数決で決めるような制度は、制度として不可能であり、決してうまくいかないということです。だから、民主主義というものは、ご政道なり、社会規範なり、個々の政治課題なりを深く完璧に理解できる人たちが、政治家として国家の名において、誠実に意思決定を行わなければならないということです。国家の名においてとは、民主主義国家においては、現在、過去そして未来における一般大衆、民の幸福を慮ってという意味です。

 この国家の意思決定を行う政治家が常に国家の名において誠実に行動しているという信頼を大衆から得ているならば、決断できない状況などというものはそもそも考えられないわけで、「大飯原発再稼働問題」、「オスプレイ配備問題」、「消費税引上げ問題」などで目の当たりにしている閉塞状況などは、起こり得ないことなのだと思われるのです。