エウレカ徒然備忘録

時事報道への感想を中心に、ときにアニメDVDを使った英語学習法などを徒然書いています

英国国民投票の結果を受けて

 6月24日、現地時間では23日は、歴史的な一日になりました。

 「戦争と平和」で、商人国家とトルストイが散々こきおろしていた英国と英国人でしたが、「国家には金儲けよりも大事なことがある、という選択を僅差で選んだ」というのが個人的な評価です。

 離脱派の主張の根拠は、止まらない移民とEUから国家主権を取り戻すということでした。一方、残留派の主張は、「もっとお金儲けがしたい。離脱すればその機会が減る。」いくらきれいごとを並べてみても要点はこれだけだったと思います。我が国の報道が伝える反応は、後者の主張に明らかに偏っており、現代日本人の心根を映す鏡のようです。

 もう1点、英国政治の凄さを垣間見せたのは、首相が即日辞任表明をしたことです。今回の国民投票の結果は、内閣不信任可決と同等かそれ以上の意味を持つとみるのが常識かもしれませんが、成文の法律条文などなくても歴史と伝統が積み上げてきた法の精神に従うのが真の立憲政治というものであることを、図らずも見せてくれました。どこか別の島国の政治家の多くも見習う点は多いのではないかと、残念ながら、感じてしまいます。

 残留派をリードした首相の意図は、離脱をEUとの交渉カードとして使うというものだったようで、今年2月にキャメロン政権は、EUとの交渉で、次のような条件を引き出し、外交的勝利を勝ち取ったのもつかの間の出来事になってしまいました。

(1)これ以上主権をEUに譲渡しない。
(2)Euro圏で金融危機が起きても英国は救済義務を負わない。
(3)難民問題に関して、EUと完全な共同歩調をとらなくてもよい。
(4)にもかかわらず、英国企業や英国国民は差別されない。

 離脱派が僅差で勝利した後の報道は、偏向に拍車がかかるばかりという印象を強くしています。

 まずは、国民投票のやり直しを求める声が大きいということを伝える記事があります。

=== 日本経済新聞電子版 英離脱、やり直し請願320万人 ===

【ロンドン=黄田和宏】23日の国民投票で英国の欧州連合(EU)離脱が決まり、英国内の世論の亀裂が深まっている。残留を支持した首都ロンドンでは「独立」を求める署名に16万人超が名を連ねている。国民投票のやり直しを求める署名も320万人を超えた。国論を二分した投票は地域間や世代間の溝を浮き彫りにし、次期政権に重い課題を突きつけている。

 「ロンドンは国際都市。我々は欧州の中心にとどまりたい」。カーン・ロンドン市長に「ロンドンの英国からの独立とEU加盟」を求める運動が熱を帯びている。ロンドン在住のジャーナリスト、ジェームズ・オマリー氏が24日から始めた署名活動には26日時点で約16万7千人が賛同した。国民投票でロンドン中心部では多くがEU残留を支持し、離脱の結果に戸惑いが広がっている。

 残留を支持した地方の主要都市でも同様の動きが出ている。イングランド中西部、リバプールの地元紙は24日、「リバプールは英国から離脱すべきか」との記事を掲載し、EU残留のために英国からの離脱を支持する考えがあると紹介した。同紙の過去の調査では、北部スコットランドが英国から独立した場合、リバプールを含むマージーサイド州を編入すべきだとの回答が4分の3を占めたという。

 国民投票の結果を受けて、スコットランド行政府のスタージョン首相は、2014年9月に反対多数で否決された英国からの独立を問う住民投票を再度実施する準備を始めている。同首相はEUと残留に向けた交渉を始めたい考えを示した。

 北アイルランドでは、民族主義政党シン・フェイン党アイルランドとの統合を問う住民投票の実施を求めている。EU離脱が決まった後、EU加盟国であるアイルランドの国籍を取得する資格を持つ住民によるパスポートの申請が殺到。一部の郵便局では申請用紙が底を突き、「入荷待ち」の案内が貼られた。

 国民投票そのもののやり直しを求める署名にも、320万人超が賛同している。国民投票で残留に投票した1600万人強の約2割に当たり、ロンドン中心部など残留支持の多かった地域の住民に署名運動が広がった。英下院は近く議会で審議するが、キャメロン首相はかねて「国民投票は今回限り」と述べており、現政権下での再投票の可能性は極めて低い。もっとも、こうした民意は次期首相に対する強いプレッシャーとなる。

英世論 後悔の波

 【ロンドン=黄田和宏】英国は23日の国民投票欧州連合(EU)からの離脱が決まり、結果に衝撃を受けた英国民に後悔の声が広がっている。国民投票のやり直しを求めた370万人を超える署名は、英国史上で最高に上った。離脱に賛成した過半の世論を否定する再投票は難しいとされるなかで、残留派を中心にEU離脱を阻止する手段が検討され始めた。(1面参照)

 ■再投票 可能性低く

 国民投票のやり直しを求める署名は、27日午後4時(日本時間28日午前0時)時点で約374万人に達した。国民投票では残留を支持した1600万人強の2割強に相当する。英議会は署名数が10万を超えれば、議会での議論を検討できる。「国民投票を再実施する可能性を排除すべきではない」。元首相のブレア氏も言うように残留派の間では再投票論がくすぶる。強硬的な離脱派でも投票前には「結果が僅差(で負ける)なら再投票すべきだ」との声があった。英国では国民投票の実施を決めるのは議会の権限。スイスのように一定数の署名が集まれば国民投票できるわけではない。理論的には議会の議決で再投票は可能だ

 もっとも僅差とはいえ国民投票で過半を占めた「離脱」という民意を無視することになる。政治的に妥当か議論になるし、次の結果が残留に覆れば離脱派も黙っていない。混乱は必至だ。キャメロン英首相は国民投票について「今回限り」と明言しており、現政権下での可能性は低い。

 ■解散で民意問う案

 議会は国民投票の結果を聞きおくだけで無視することもできる。国民投票は政治に対する「助言」の意味合いが強い。議会は政策決定の参考にすればよく、投票結果を履行する法的な拘束力はない。ギリシャが2015年夏に実施したEUの緊縮策受け入れを巡る国民投票の結果を無視したように、英議会も結果を受け入れる義務はない。「我々は議会の投票でこの狂気を止められる」。野党労働党のデビッド・ラミー下院議員は25日にこう呼びかけた。

 英BBCによると、離脱手続きはまず英議会がかつて制定した法律を廃止する必要があるという。議会はEU離脱に反対し、離脱の手続きを進めない選択肢も残されている。下院議員の過半はこれまで残留を支持してきた。信条通り投票すれば、議会はEU離脱に必要な法廃止などの手続きを否決できる。

 署名サイトには投票日の23日を「独立記念日」とするよう求める動きがあるが、1万7000人しか署名していない。英国民の「後悔」を政治的に無視できないとすれば英議会を解散し、EUからの離脱の賛否を公約に掲げて、総選挙で民意を問うこともできる。ただ、下院を解散する権限は首相にない。5年の任期途中で解散するには、議席の3分の2以上の賛成といったハードルを超える必要がある。議員は党の公約より選挙区の民意に引きずられやすい。保守党や労働党を含めた政界再編に発展し、英政治・経済の混乱が深まるとも懸念される。

 残留を支持した北部スコットランドがEU離脱の手続きを妨げるとの見方もある。スコットランド行政府のスタージョン首相は26日、BBCの番組で英議会の立法手続きを「妨害」することで、英国のEU離脱に実質的な拒否権を行使する可能性をちらつかせている。

 離脱の手続きは、EUの基本条約であるリスボン条約(50条)に基づき、英国が欧州理事会に離脱の意思を通知することが必要。通知しない限り、英国はEUにとどまり続けることになる。

=== 転載 終わり ===

 さて、日本国債をシングルA+やA1と評価する、格付け機関も早速動きました(S&P、英の国債格付け「ダブルA」に2段階下げ )。しかし、それでもダブルAの英国ポンドが暴落して、しんぐるA+の日本円が円高に苦しむほど買われるというのが現実であり、格付け機関の出鱈目さを際立たせる出来事が、また一つ、といったところではないかと思われます。