エウレカ徒然備忘録

時事報道への感想を中心に、ときにアニメDVDを使った英語学習法などを徒然書いています

英語習得法−その4:Schwaの発音−

昔の話だが、Kateさんと言う英国人女性から英語を習った。元教師のScotland人の血も引いている方だったが、2年間ほどQueen's Englishをみっちり教わるこができて、今でも感謝している。小生の英語の基礎はその時に養ってもらったものと言っても過言ではない。そのKate先生がある日の授業で教えてくれたのが、この“Schwa”であった。「シュワー」と言う感じに発音するのだが、日本で受けた英語の授業では聞いたこともない単語だった。

Schwaと言うのは、綴りからして独語っぽい感じがするが、辞書を引くと「独語由来の単語。もともとはヘブライ語の母音が欠けていることを示す記号の名。」(PROGRESSIVE英和中辞典)とある。要するに、曖昧母音のことだった。しかし、このSchwa、英語では曖昧どころか、最重要の母音だったことにそれまで気が付いていなかった。英語の母音のほぼ7割方が広い意味でのこのSchwaなのだそうだ。英語の発音は、日本語とは全く異なる音節の考え方とSchwaが重要で、これらの理解なくして改善の余地はほとんどないと言えるくらいだ。

例を挙げて説明する。英国の元首は、言うまでもなくエリザベス女王で、女王のお住まいはバッキンガムパレスである。ところで、エリザベスと日本語で話すとき、E-Ri-Za-Be-Su、何と5音節にもなる。原則として子音と母音を組み合わせて1音節を構成する日本語では、どうしても音節数が多くなる傾向にある。この意味で日本語に似ているのが伊語や西語である。宮殿の方はBa-Ki-N-Ga-Mu-Pa-Re-Suの8音節若しくはKinは1音節とみなして7音節になるのだろう。ところが、英語では何音節になるかと言うと、E-liz-a-bethの4音節となる。しかも強勢はlizに置かれ、それ以外の母音はSchwaで発音すると言うか、はっきりと発音しないように発音する。辞書を引くと最初のEは、さすがにEに敬意を表して[ i ]の発音記号だが、その後のaとeの音は、所謂eをひっくり返したような代表的な曖昧母音の発音記号なのである。だから、Elizabethの発音は「ィリーズブス」のように聞こえるはずだ。

宮殿の方はどうなるかと言うと、Buck-ing-ham Pal-aceである。日本語に比べて明らかに音節の数が少ない。そんなことはほとんど発音したかしないかの母音がたくさんあるからできるのだ。強勢はBuckの所にある。母音uは、日本語のアの音だと言う話を既にした。iの音は[ i ]の発音記号と言うよりingで「イング」。「りんご」と言うときの「ング」である。hamは、gと連結して、かつ、aはSchwaだから「グム」と言う感じになる。Palaceの方は、Palに強勢があり、後半は曖昧発音になる。従って、「バッキングム パリス」と言う感じで、しかもキングム リスは小さい字にするというかできるだけ弱勢にするのである。文字による説明ではなかなか理解し難いと思う。Schwaを十分意識して、英米人の発音を一度良く聴いてみることをお勧めする。

ところで、当時Kate先生の愛読紙は、Guardian紙だった。英国の三大朝刊、通称Quality Paperは、The Times、The Daily TelegraphとGuardianで、Timesは中道からやや右寄り、Telegraph紙は完全に右で保守党寄り、Guardianは労働党寄りだった。元教師のKateさんは、職業柄Guardianを自然と愛読するようになったものと想像する。Quality Paperに夕刊のない英国では、右も左も帰宅時には、Evening Standardと言う文字通り中立的な夕刊専門紙を読むのが一般的だった。Kateさんも偏りのない立場を知るためと称してこの夕刊もよく読んでいた。Tony Blair労働党政権は、伝統的な労働党政権とはかなり調子が異なっていたので、Blair首相時代の各紙はどのような立場を取っていたのか、多少興味はある。

新聞で思い出したが、上記の三大紙の他に、橙色の紙面のFinancial Timesと言うCityでは定番の経済紙があった。Financial Timesは、米国のThe Wall Street Journal英語圏を二分する経済紙だったが、Canada人と言うのは複雑で、米国への屈折した感情を反映しているのか、近所で発刊されているThe Wall Street Journalではなく、わざわざFinancial Timesを読むのだと言う話を聞いたことがある。いかにもありそうな話で、そんなものかなと思いながら、この目で実際には確かめることは未だにしていない。