エウレカ徒然備忘録

時事報道への感想を中心に、ときにアニメDVDを使った英語学習法などを徒然書いています

新世紀エヴァンゲリオン感想

今日は、米軍によって東京が空襲され、多くの民間人の生命が失われた日なんですね。犠牲になった方々のご冥福を祈り、そう遠くない昔、外国の軍隊によって国土を蹂躙された事実を忘れないようにしなければなりません。

さて、新世紀エヴァンゲリオン。英語訳は“Neo Genesis Evangelion”で、Genesis旧約聖書の創世記、起源、の意味なので、英語訳の方が物語の内容にしっくり来るような気がします。それはさておき、アニメ切手が発売されたことも手伝って、漸く全話鑑賞。論争になった第25話および最終回第26話は、TV版と劇場版の両方で見てみました。確かに、主人公シンジの内省的な心象風景を主に描いたTV版は、使徒との戦いを描いた第24話までの内容と断絶しており、また、24話までに提示されてきた謎、「アダムとリリス」、「人類補完計画」、「綾波レイの正体」、そして、そもそも「エヴァンゲリオン」とは何だったのか、と言ったことに一つも答えていないので、これは熱心に物語を追ってきたFanの期待を裏切って余りある終わり方だったのだろうと容易に想像できる。これに対して、1年余りの時間を経て発表された劇場版は、これらの謎に一応の答えを提供する内容にはなっている。

作品が発表された時代を考えると、第1話が1995年10月だ。1995年と言えば、年初に「神戸・淡路大地震」が起こり、続いて「地下鉄サリン事件」、「70円台超円高」など、もう経済大国日本もいよいよだめなんじゃないかと思わせるような事象が相継いだ、世紀末気分のようなものが漂った年だったのではなかろうか。そういうことを考えると、この作品の登場人物たちがそろいもそろって根暗、内向的なところが時代の雰囲気を反映しているのかとも考えられる。

そんな時代背景も考えながら見ていると、TV版の結末と劇場版とを見比べてみて、個人的には、評判の良くないTV版の方が分かり易いかなと思っている。TV版の結論は、要するに中村天風流の「晴れて好し、曇りても好し、富士の山」ということで、物事を認識するのは結局「心」の在り様なのだ、と言うことだった。だから、内向的で自分に自信の持てない主人公、Evaに乗って使徒を倒す時だけ父親や他人から褒めてもらえ、Evaに乗ることによってしか自分を見出せなくなっていた主人公シンジが、真に自我に目覚め、生きることの意味をそれなりに見出すところで終わっている。想像するに、庵野監督の当初の主題は、こんな所だったのだろうが、キリスト教の世界観を持ち込んだり、謎の多い複雑な物語構成にしているうちに、最終回までに収拾がつかなくなってしまったのではなかろうか。

これに対して、劇場版は、それなりに様々な伏線の回答が試みられる形で物語が進行するものの、「ちょっと、このAnimeは、お子ちゃまには見せられない代物ですぜ。」と言う内容になっている。お子様に見せられない基準については、例えば女性の乳房を例に取ると、物理的に乳房を曝すような映像は、エロイ状況はもちろん、母親の授乳の場面もだめだが、多少のエロイ状況でも乳房さえ曝さなければ良いと言うのが米国流、反対に子供の時間帯にエロイのはだめだが、芸術的なものや母親の授乳の場面なら構わないと言うのが英国流と言うのが、私の個人的見解だが、Eva劇場版は、このどちらの基準から言っても子供が見るには不適切な作品だと言うことだ(暴力、流血も尋常ではない)。そして、全ての謎が、すっきりと解かれたのかと言うと、量産エヴァンゲリオンの磔の空と海岸にシンジとアスカが打ち揚げられている最後の場面は、少なくとも私には意味がわからなかった。

そして、暗い時代を反映してか、哲学的、内省的描写が多く、日本Animeの可能性をその方面で推し進めた画期的作品と言う評価は間違っていないとすれば、天才的な科学者赤木母子の行動が碇ゲンドウに対する性愛に全て帰せられる所など、薄っぺらい描写に思えてしまう。碇ゲンドウがアダムとリリスを使って一体何をしたかったのか、そもそもこの人物は何だったのか、分からなかった。

しかし、空色の髪と赤い瞳を持つ少女、綾波レイの醸し出す尋常とはいえない独特の雰囲気は、レイ同様自然の人間ではなかったEureka(特に物語り序盤のEureka)にそっくりではないかと言うことに途中で気が付きました。また、Flash Cutを多用したOpeningの演出、各Part開始のEye Catchなど、「交響詩篇エウレカセブン」がEvaから受けた影響は、それなりに大きいようです。「交響詩篇」の製作StaffがParody好きなのは、作品から明らかな周知の事実ですが。

社会現象まで起こして未だに論争が絶えないEvaも、今年が劇場版公開から10周年とのことで、「新世紀ヱヴァンゲリヲン」三部作劇場版が新たに製作され、第一部が2007年9月に松竹・東急系で公開されるそうだ。考えてみると、携帯もろくに普及していなかった時代なのである、10年前は。現代と言う時代の流れの速さを痛感せざるを得ない。