制度変更に伴う経過措置と言うのは、とりわけ事を複雑にして、受験勉強中も覚えるのに苦労しましたが、事の本質を理解しているのといないのとでは、覚えること自体にもその後の活用においても雲泥の差を生じるような気が致します。講習2日目の国民年金法の講義では、公的年金の現状についてそのような方向から話があり、その点が勉強になりました。
我が国の公的年金は、大別すると国民年金、厚生年金、共済年金です。この内共済年金は公務員等に限られ、特殊ですので説明の都合上省きます。本当は、受験勉強であまりやらない共済も分かっていると強みになると思いますが...。余談ですが、老齢基礎年金、老齢厚生年金などと、通常は「老齢」と言う言葉を使うところ、共済では「退職」と言う言葉を使うなど、微妙に言い回しも異なります。
厚生年金が労働者年金として発足したのが昭和16年6月です。その後昭和19年10月に厚生年金制度として被保険者の対象が拡張されるなどの整備が行われました。一方、国民年金は、昭和36年4月施行です。両者は全く別々の制度で、前者は年金受給権を取得するための最低加入期間が20年、支給開始が60歳、後者は25年、65歳でした。この元々別個に発足した2つの制度を合併させたのが昭和60年の大改正です。当時のことはあまり記憶にありませんが、こんな強引なことを敢行したのは国民年金が財政難に陥っていたのを上手く救済する便法だったのではないかと思います。
この昭和61年(1986年)4月1日施行の大改正で国民年金と厚生年金の定額部分が基礎年金として共通化されたのです。従って、将来の厚生年金受給対象者にしてみれば、支給条件が厳しくなり、支給開始年齢が引き上げられ、その上、基礎年金は通常定額部分を若干下回ることになるので、明らかな条件の劣化でした。既に厚生年金を受給している人との間にも、改正法の遡及効はないので、相当な給付額の差が生じ世代間の不平等感が生じます。
現在行われている、特別支給の老齢厚生年金は平成13年4月から平成38年までかけて、その年以降に厚生年金の受給権を取得する者の支給開始年齢を徐々に引き上げて最終的に65歳支給開始に移行させるための経過措置です。また、厚生年金の報酬比例部分に経過的加算と言うのが加算されると社労士資格勉強中に習いましたが、この分かりにくい経過的加算とは、実は定額部分に比べて少なくならざるを得ない基礎年金の補完で、そうだとすれば、特別支給の老齢厚生年金で定額部分を支給される最後の年代となる昭和24年4月1日(女子は5年遅れの29年まで)生まれまでと論理的に結論が出ると言うわけです。
特別支給の老齢厚生年金 男子(女子は5年遅れ)
基礎年金受給資格の特例
昭和31年4月1日以前生まれは、厚生年金等被用者年金加入期間が20年から24年で受給者資格を取得する。
基礎年金受給権取得 中高齢者の特例
40歳(女子35歳)以後の厚生年金被保険者期間が15年から19年